2016 Fiscal Year Research-status Report
多読・多聴・多話活動が理系学生のスピーキング力に与える影響の実証的研究
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16K02867
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
松田 早恵 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50388641)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多読 |
Outline of Annual Research Achievements |
「四技能を総合的に育成・評価すること」との中央教育審議会(2014)の方針を受け、大学では今日特にグローバルな発信能力が求められている理系でも「書くこと」「話すこと」を含めた教育が必要となってきている。一方で、大学の理工系学部の英語教育が要請に見合う教育内容になっているかと言われると疑わしい。限られた授業数の中では、学生は圧倒的なインプット・アウトプット不足、話す内容(コンテンツ)の欠如に陥っている傾向にあり、話すときの土台(フレーム)の構築が急務となっている。 本研究では、英語に苦手意識を持ちがちな理系の大学生を対象に多読・多聴・多話活動を中心に据えた指導を行った場合、スピーキング力に変化が表れるかを探った。「四技能を測定する資格・検定試験の更なる活用」を見据え、Progress、Versant、OPIcという3 種類のオンラインスピーキングテストを実施し、活動前後の結果を比較した。 2016年度後期に実施した予備調査への参加者は、理工学部の1年生~3年生18名(実験群14名、統制群4名)で、実験群の学生は10回の多読・多聴・多話活動を行った。プレテスト・ポストテストの結果からは、実験群はいくつかの項目で向上が見られたが、統制群は変化がないか、もしくは悪化したことがわかった。また、実験群ではOPIcのプレテストでNovice LowやNovice Midレベルだと判断された学生の中にポストテストでレベルを上げた学生が多かったことから、今回の活動が特に低位層に効果がある可能性も示唆された。また、アンケートやインタビューからは、英語で話すことや聴くことへの態度の変化も観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究期間を(1)研究基盤の整備および試行期間、(2)計画本実施期間、(3)成果発表期間に区分し、(1)の試行期間にあたる2016年度は、(ア)計画実施に必要な多読・多聴教材の準備および音声再生・録音のための環境整備を行い、半期間の試行を行うこと、(イ)試行を踏まえ、多読・多聴・多話活動の実践および3 種類のテスト(Versant、OPIc、Progress)のプレテスト・ポストテストを行い、録音データも採取すること、(ウ)テストデータおよび録音データを分析し、結果を国内外の学会で発表することを目標としていた。 2016年度前期に(ア)の教材準備・音声環境の整備を行い、同時に理工学部の学生を対象に参加を呼びかけた。説明会を2度開催し、夏休み前に最終的な参加者を固めた。活動に参加する実験群とテストのみを受ける統制群に分け、9月の後期開始の一週間前から(イ)のプレテストの実施を始めた。3種類のオンラインスピーキングテスト実施後、多読・多聴・多話活動を開始し、録音データを採取した。10回の活動終了後、ポストテストを実施した。(ウ)のデータ分析はまだ作業中であるが、3種類のテストおよび学生へのアンケートやインタビューから読み取れた変化をまとめて、今年7月に開催される第4回世界多読会議で2人の連携研究者と共に発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、前期には2016度の活動と結果の振り返りおよびデータ分析、後期の本研究に向けての準備(研究計画・方法再考、教材選定、IT環境整備、参加者募集、説明会開催、参加者確定)に充て、後期には、本調査を実施する。 量的分析を考えると、有効なデータを得るために、もう少し人数を増やしたいところだが、授業以外に週1コマを15週拘束するのは、実験などで忙しい理工学部の学生にとってはハードルが高い。また、個別指導や面談を含む活動の性質上、むやみに人数を増やせない事情もある。 科研申請時点では、予備調査後の修正の可能性として(1)教材の修正、(2)対象学生の拡大、(3)期間の修正、(4)タスクの修正を挙げていたが、(1)予備調査で使用したOxford Reading Treeは、まず適切だったと言えるので、今年度も同教材を使用する。一番進んだ学生はStep 4まで到達したが、Step 4から急に難しくなったと感じた学生もいたことから、難易度を上げるのは慎重にした方がいいことがわかった。(2)対象学生に関しては、もし自由応募で思うように参加者が集まらない場合は、研究者が担当する理工学部2年生対象の後期の授業「実践英語中級」の学生も候補に考えたい。(3)期間の延長は現実的に厳しいので、今回は半年のままとする。(4)タスクに関しては、修正を検討している。予備調査では極力指導は行わず、90分を音読→シャドーイング→リピーティング→再話の繰り返しに充てた。慣れてくると90分は長すぎ、途中で集中力が切れる学生もいた。また、音読や再話の方法も徹底できていなかったため、今回は音声や再話の指導を加え、個別にフィードバックを入れてメリハリをつける。さらに、上記の活動だけでは「読む」量が少ないので、インプットを増やす方法も再考したい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、予定していた3種類のオンラインスピーキングテストのうちVersantが試行アカウントでの実施となり、費用が発生しなかった。また、学会発表に伴う出張費も不要であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、有効なデータを得るために参加者の数を増やしたいと考えており、そのためにかかるスピーキングテスト3種類のコストも増える予定である。また、連携研究者2名と国際多読学会で発表することが決定しており、大会参加費や交通費などにも充てたい。
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