2017 Fiscal Year Research-status Report
多読・多聴・多話活動が理系学生のスピーキング力に与える影響の実証的研究
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16K02867
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
松田 早恵 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50388641)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多読 / 多聴 / スピーキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、前年度に引き続き、英語に苦手意識を持ちがちな理系の大学生を対象に、多読・多聴・多話活動を中心に据えた活動を行った場合スピーキング力に変化が現れるかを探った。Progress, Versant, OPIcという3種類のオンラインスピーキングテストを実施し、活動前後の結果を比較した。また、平成29年度は、独自のスピーキングテスト(音読、絵の描写、3こまストーリー描写)も加えた。さらに、メタ認知の観点から学生の意識や気づきを汲み取るため、毎回振り返りシートの記入を課した。
理工学部1年生~修士課程1年生17名を対象に14週間(pre- post-テストを除く実質の活動期間は9~10週)に渡って、多読・多聴・多話活動を実施した。平成28年度の試行では、ブックトークや再話の準備に時間をかける学を踏まえ、活動内容には修正を加えた。前年度の、聴き読み、シャドーイング、リピーティング、ブックトーク・再話の流れでは、最後のブックトーク・再話の負荷が重く、読む量や話すスピードにマイナスの影響を及ぼしているように見えたので、平成29年度はブックトーク・再話の代わりに自力の音読を加えて、学生の負荷を減らすと同時に反復インプットおよびアウトプット量を増やすことにした。「音声や再話の指導」に関しては、連携研究者とも協議した結果、当初の「明示的な指導を行わずに変化が現れるかを見る」という研究目的に立ち返って、本年度も行わないことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の試行結果に関して、平成29年8月に東洋大学で行われた第4回世界多読会議(The Fourth Extensive Reading World Congress)で分析内容を発表した。平成30年3月にそのProceedingsの査読が済み、4月末に修正原稿を提出したところである。
平成29年度実施のプロジェクトに関しては、まず、インプット・アウトプット量が増えたかどうか、3つのオンラインテスト(Progress, Versant, OPIc)の結果に変化が見られたかを探った。インプット・アウトプットの延べ語数は前年度より増えたが、ProgressやOPIcのスコアやレベルの向上はあまり見られなかった。一方、Versantでは、平均スコアの向上が見られた。さらに詳しく変化の有無を見るために、今後は独自のスピーキングテストの音声や活動音声も分析する予定である。
負荷を減らしたにも関わらず、学力低位層の学生には平易な文のシャドーイングやリピーティングは難しく、逆に比較的英語が得意な学生にとっては活動が単調となり、高い離脱率(29%)に繋がってしまった。全体としては、色々な面で問題の残る研究結果であったが、Moodleで毎回の活動後に回収した振り返りシートからは、多様な「気づき」を汲み取ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、活動時の録音音声や独自のスピーキングテストの音声データをPraatや音素カウンタなどの音声・音素認識ソフトを用いて分析する。また、使用語彙に変化があったかどうかはVocabulary Profileで分析を試みる。さらに、毎週Moodleアンケートで回収していた振り返りシートのデータを学生のメタ認知や気づきの観点から分析する予定である。
研究手法の紹介および3種類のオンラインテストの結果は、平成30年8月に開催予定のJACET国際大会(於:東北学院大学)で発表する予定である。また、独自のスピーキングテストの音声データを基に、音声面、語彙面での変化をまとめて分析し、本年度中に学会での発表を目指したい。さらに、「振り返りシート」から汲み取れる、活動全体に関する学生の評価やことばに関する気づき、学習への動機づけの変化などの観点からも探っていきたい。
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Causes of Carryover |
研究プロジェクト参加者(学生)が当初の予定よりも少なかったため、オンラインテスト実施費に充てる支出が少なくなった。平成30年度は最終年度であるので、詳しい結果分析を行い、海外の学会もしくは国内の全国大会などでの成果報告を目指したい。本年度の科研費は、研究代表者および連携研究者3名の学会参加費や出張旅費に加え、参考資料代などに充てる予定である。
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