2016 Fiscal Year Research-status Report
和英辞典の弱点を補う:構造上収録されない英語語句の研究
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16K02898
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 茂 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60298130)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 和英辞典 / 二言語辞書 / 発信型辞書 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の研究発表とシンポジウムを行った。 「和英辞典の編集と使用上の問題点」日本実用英語学会第41回年次大会.沖縄大学.2016年9月10.11日. 概要は以下の通りである。和英辞典は、日本人の英語による発信をサポートする最も身近な辞書だが、十分に活用されているとは言えない。和英辞典が使用者のニーズに応えられていないことが主な理由であろう。語彙化された日本語の見出しごに英語の等価表現を配する構造、スペースの制約などのため、使用者が遭遇する千差万別の英語での発信場面でのニーズに逐一応えることは至難の業である。また、英語での発信の使える辞書には、英和辞典、(学習)英英辞典、類義語辞典、シソーラス、コロケーション辞典もある。これらに加え、携帯型電子辞書(の諸機能)、アプリ、コーパスなどの電子媒体のツールも存在する。そもそも高度である英語の発信に、上記辞書類をシステマティックに組み込み遂行するためには、使用者側に相当な英語力、知識が要求される。このような状況下で和英辞典が有用なツールとして存続していくためには、その特性を活かし、内容、構造を見直し、検索性を向上させると同時に、学習効果を高め、付加価値を増してていく必要がある。 「和英辞典:コロケーションと日本文化発信」シンポジウム(塚本倫久氏、森口稔氏と)JACET言語教育エキスポ2017.早稲田大学.2017年3月5日. シンポジウムは以下の構成を取った:1和英辞典の流れ(森口)、2日本人が発信に使える英語辞書(山田)、3和英辞典編集上の問題点、4和英辞典におけるコロケーションの扱いについての現状(と課題)(塚本)、5日本的事物の英語による記述(森口)。複数の訳語・コロケーション(英語)間の意味の違いを扱う必要があること、日本語のコロケーション情報が不十分であること、日本語コロケーションを記述する上でのコーパスの有用性などが指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、和英辞典が使用者のニーズに応えきれていないのは、日本語の見出し語に対する英語の訳語・等価表現を配する構成を取るのため、致し方なく収録しきれない情報が存在するからであるという仮定に立ち、どのような情報が欠落しているかを、3種類の異なる英語辞書から手作業で採取し、その傾向を明らかにすることを目的としている。3種類の辞書は以下の3冊である:Longman Wordwise Dictionary(中級外国人学習者向け英英辞典)、Longman Essential Activator(中級外国人学習者向け類義語辞典)、『日本語学習英和辞典』(日本語を学習する外国人向け、日本人のための「和英辞典」に当たる)。 研究の手順は以下の通りである:1データ収集、2データ分析、3データ検証、4研究成果の統合・発表。現在、「1データ収集」の段階にあり、Longman Wordwise Dictionaryを記録を取りながら通読している。後の分析のために、なぜその情報が和英辞典に収録されないかの以下のような理由も付記している:日本語に概念がない、概念を表す日本語がない、概念を表す語彙化された日本語がない、日本語にしても意味をなさない、その他。そして、それら和英辞典に収録しきれない情報を、どのように扱うべきか(和英辞典で扱う、英和辞典で扱う、上記以外)も可能な限り検討し付記している。これらを考慮し、記録しながら、英英辞典の見出し語、定義、用例、注記・記事を、和英辞典に収録する際の対応する日本語の単語、複合語、コロケーション、成句等慣用表現を考えつつ読み進めて行くことは注意力を要する、時間のかかるプロセスであることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
その構造上、和英辞典に収録しきれない英語情報を明らかにするめ、傾向の異なる3種類の英語辞書を精査し、手作業でデータを収集する計画を立てた。現在、1冊目のLongman Wordwise Dictionaryを通読し情報を採取しているが、見出し語、定義、用例を読むに際し、単語、フレーズ、慣用表現のレベルで和英辞典に収録されうる日本語と逐一対応させ、収録されない理由を考慮、記録しつつ読み進めていく作業は注意力を要し、時間のかかるプロセスであることが判明した。本研究では、日本人が発信に使える、英語の中核をなす語句・表現の中から、和英辞典に収録されていない情報、そのパターンを解明することを目的としている。当初挙げた3種類の英語辞書の中で、そのような英語の基本情報に特化された辞書は、Longman Essential Activator(学習類義語辞典)、『日本語学習英和辞典』(英語を理解する外国人の日本語での発信をサポートする辞書)よりも、Longman Wordwise Dictionaryであると思われる。よって、まずはこの辞書からのデータ収集に集中し、得られたデータを分析し、電子辞書に収録されている和英辞典、インフォーマントによる検証に付したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が出た主な理由は、データ収集が遅れたため、インフォーマントによる検証がなされず、そのための謝金が使われなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集したデータを分析し、インフォーマントによる検証に付し、その謝金に使いたい。 11月に中国天津の河北工業大学で行われる、The Fifth International Symposium on Lexicography and L2 Teaching and Learningの旅費に使いたい(現在応募中)。
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Research Products
(3 results)