2017 Fiscal Year Research-status Report
多読学習における「難しさ」の認識の解明:リーダーコーパスの構築・分析と実証的検証
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16K02904
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
加野 まきみ 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (90352492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ゴーベル ピーター 京都産業大学, 文化学部, 教授 (40329925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | GRリーダーコーパス / 多読学習プログラム / Mreader / 品詞タグ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,昨年度に一年間通して実施した多読学習プログラムの検証を行い,多読学習プログラムと読書習慣や英語力の伸びとの関係ついて複数の国内外の学会で発表した.検証の結果,リーディングスピードの向上は見られたものの,語彙テストでは語彙力の伸びを確認することが出来なかった.多読学習を一年間行った学生を対象に事後のアンケートも行い,多読学習プログラムが読書習慣を身につけるのに役に立ったという評価を得た.アンケート結果をもとに,プログラム自体の改善策を検討し,今年度のプログラムを設定・実施した.特に,多読学習支援モジュールのリーダーを読む間隔の設定には学生からの不満が多く,読書習慣や読書意欲に影響を及ぼしている可能性があると判断し,レベルに応じた細かな設定が出来るように,見直しを行った.上記のアンケート調査の結果などから,学生の「難しさ」認識に繋がった可能性があると判断された文法項目,文の構造,表現などを,意図的に操作した文章を作成,また,その文章を読んだ被験者の理解度を測る質問の作成した. コーパスデータについては,これまでの研究で,文の構造の複雑さをパターン化して分析するためにはコーパスには品詞タグを付ける必要があることが分かっているので,既存のコーパスに,品詞タガーを用いて品詞ダグ付けを行った.リーダーの多くが会話文を多く含むフィクションストーリーであるため,品詞タガーでの品詞タグ付けの精度が低く,手作業での確認・精度の向上に引き続き取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の多読学習プログラムは順調に実施され,次年度の検証実験の準備は順調に進んでいる.リーダーコーパスの作成には,手作業での入力となる部分があり予想以上の時間を要している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,以下の点を挙げる. ・リーダーコーパスについては,次年度以降にアルバイト学生の雇用などによりリーダーのデータ化作業をさらに進めて行く.具体的な作業工程としては,入手したリーダーをスキャナで実際にスキャンし,PDF化,文字化を進める(研究代表者・アルバイト学生).後処理として,データ形式の統一,ファイルの統合,レベル別分類などを行い,タグ付けを行う. ・本格的なデータ分析を行うに当たって,AntConc, AntWordProfiler, RANGE, Microsoft Word「読みやすさの評価」などのツールや,BNC,COCA などの汎用コーパス,また BNC wordlist, The BNC/COCA word family lists, general service list, academic word list, COCA ngram list などの語彙表を使って,YR の「難しさ」の要因を明らかにするための予備調査を行う. ・検証実験の実施:上記の調査の結果,学生の「難しさ」認識に繋がった可能性があると判断された文法項目,文の構造,表現などを,意図的に操作した文章を,被験者に実際に読んでもらう.また,その文章を読んだ被験者の理解度を測る質問などを含む,理解度テストと事後のアンケート調査を,多読学習を一年間行った学生を対象に実施する.調査結果を統計的に分析し,実際にどの要素が理解を妨げているのか,検証を行う. ・その他リーダーの選定:多読学習に他に組み込む可能性のあるリーダー・シリーズを見極め,それぞれ読み込むデータを決定する.各種リーダーコーパスのそれぞれの言語的特徴を明らかにし,多読学習への有効性を判断する.以上の結果を踏まえて,多読学習では GR に加えて,どのレベルで,どのようなリーダーがあれば,「難しさ」の克服に繋がり,さらにはネイティブスピーカー用の一般書への架け橋になるのか,提案をする.
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