2017 Fiscal Year Research-status Report
小学生への音韻意識指導の実践に基づいた音韻意識プログラムの開発
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16K02911
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Research Institution | Kobe Yamate College |
Principal Investigator |
村上 加代子 神戸山手短期大学, その他部局等, 准教授 (00552944)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語教育 / 音韻認識 / 小学校外国語活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語圏の基礎的読み書きスキルの一つである音韻意識(音韻認識)に着目し、小学校での「音に慣れ親しむ」活動における音韻意識プログラムの作成を目的とする。同時に児童らの英語の音韻意識の実態把握としてアセスメントを実施し、指導による効果や傾向等の把握も行った。 H28年度は公立A小学校児童を対象とした音韻意識指導調査の3年目となる。2年目に実施した音節課題結果から、指導プログラムの効果及び児童の誤りの傾向を確認した。音節数ごとに指導効果を検討した結果、事後テスト(指導後)では、すべての音節数で正答率の向上が認められた。また、指導前後ともに1音節の正答率が最も低く、逸脱数(数え上げた音節数から正しい音節数を除したもの)が最も多いことが示された。さらに音韻認識の定着度を確認するため、指導終了時から約1年後に、3年生(前年度2年生)への音節課題を実施した。その結果、4音節課題を除く全ての音節で正答率が向上していることがわかった。これらのことから音韻認識指導を通じて児童は英語の音節感覚を体得し維持するだけでなく、外国語活動でさらに向上する可能性が考えられた。一方で課題困難児童(下位9%)の回答からは英語の分節化および特定の音素や子音の組み合わせに誤りが生じる傾向が確認された。一方で、下位9%のat-risk児童はスコアが下降しており、定着が十分になされていないことが示された。しかし誤答分析から児童が英単語を日本語とは異なる分析を行っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に実施を開始した小学校での音韻認識指導は3年目となり、H29年は3-4年生が中心となった。H28年は授業の回数に制限があり、オンセット-ライムの指導にまで至ることはできなかったが、H29年度にはオンセット-ライム、音素までの指導をすべて終えることができた。 指導では多感覚を用いた帰納的アプローチで子どもたちの気づきを促すよう働きかけ、ゲームなどの活動で音韻の感覚を身につけることを目標とした「英語音韻認識育成の3ステップ」を開発し、音韻意識指導を大きな単位から小さな単位へと段階的に育てることを狙いとした。ステップ1として語・ライム(ライミング)音節へ、ステップ2でオンセットライムを扱い、ステップ3では音素の単位の認識と操作練習を行う。28年度には指導の効果を指導前・後に課題を実施して確認した。また、未指導の学年との比較を行い、学年による音韻認識の差と、指導あり群・なし群の比較も行うことができた。 英語教育関係の学会・研究会にて成果を発表・報告した。学校等の研修においても成果の一部を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の大きな目標として、日本の英語教育におけるリテラシー育成は大きな課題だと考えている。本研究では、小学生を対象とした継続的音韻認識指導によって以下の二点が明らかにされつつある。(1)英語の音韻認識の各単位における日本語母語の影響、(2)明示的な音韻認識指導による成果。 これまで日本の英語教育において英語を分析的に聞く力、すなわち音韻認識のような文字に対応する「聞き方」の指導は行われてこなかった。しかし今後の英語教育の発展において、「読み」をいかに効率的に獲得するかは心理的な観点からの検証が欠かせない。学習者の認知面を考慮し負担の少ない指導を今後も実践的に行い、その成果を丁寧に見ていきたいと考えている。今後の研究は英語の初期学習者を対象として、音韻認識の育成に焦点をあてていたが、次のステップとしては文字との接続につなげる指導研究が欠かせない。既に英語圏の調査ではフォニックス学習には音素意識が必須であると言われているが、日本人児童生徒はそのレディネスが育っていないことが本調査で明らかにされようとしている。小学校高学年から中学生にとって、単語がすらすら読める、書けるために必要な聞く力を育て、さらに文字と対応できるデコーディング、エンコーディングの力をいかに育成するかが今後の研究課題である。
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Causes of Carryover |
残額452円であり、ほぼ予定通りに執行した。
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