2016 Fiscal Year Research-status Report
法廷通訳に求められる通訳の正確性・等価性に関する研究
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16K02925
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
水野 かほる 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (90262922)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法廷通訳 / 訳しやすさ・訳しにくさ / 通訳の正確性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、法廷通訳における言語上の正確性や等価性の保持に関して、その現状把握と実現のための方策を探究することである。2012~2014年の挑戦的萌芽研究「司法通訳人の負担軽減のための学際的研究―就労環境整備と日本語運用技術の改善―」では、法廷通訳人の負担に焦点をあてた量的調査を実施した。そして、法廷通訳人が法曹三者(裁判官・検察官・弁護人)の発言にわかりにくさ、訳しにくさを感じている実態を明らかにした。その結果をもとにした通訳実証実験から通訳を介した場合の等価性とはどのようなものかを探究する手がかりを得ようと試みた。 本年は、今後の法廷通訳人と法律家に対する言語等価性に関する調査のための前提として、起点言語である日本語を外国語に訳出する際に、そのプロセスにおいてどのような文法的差異と訳出上の困難を伴うか等に関して、上記実証実験の分析とまとめの残された作業を行い、その成果を公開した。当該成果をもとに、今後、法廷通訳の正確性・等価性についての実態を把握するために、法廷通訳人・法律家に対するアンケートと半構造化インタビュー調査を実施する予定である。 また、あまり知られていない司法通訳・法廷通訳の仕事の内容や実態を知ってもらうため、警察の通訳官及び法廷通訳人が参加する特別講義とワークショップを学内で開催した。2016年12月:「司法通訳という仕事」(静岡県立大学国際関係学部特別講義)、2017年2月:「通訳入門ワークショップ」(静岡県立大学国際関係学部特別講義)実施。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法廷通訳人に対する量的調査において、法廷通訳人が法曹三者の発言に対して感じる訳しやすさ・訳しにくさの結果として、発言の中に否定が繰り返されるときの訳しにくさの指摘がされた。その結果を基に、起点言語である日本語の否定疑問文や二重否定表現が通訳という作業を通してどのように変容するのか、そこでの訳しにくさはどのようなものなのかを調べる実証実験を実施した。本研究課題の遂行のためには、この実証実験の分析とまとめを継続する必要があった。そのため、法廷通訳人と法律家を対象とした法廷通訳の際の言語上の問題や通訳上の困難点に関するインタビュー調査実施が若干遅れたが、現在、実施に向けての準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、法廷通訳における実態調査とそれに基づく検証実験から、通訳を介した場合の言語等価性に焦点をあて、適正でわかりやすい通訳を実現するための通訳の運用技術についての提言をすることを目的とする。したがって、今後は、法廷通訳人及び弁護士等法律家を対象に、法廷通訳の正確性・等価性について、司法現場の現況把握と関係者の認識を把握するためのアンケートとインタビュー調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
法廷通訳人に対する通訳実験の分析と考察を継続して行う必要があり、法廷通訳の正確性・等価性についての法廷通訳人及び法律家に対するアンケート、インタビュー調査実施まで至らなかった。そのため、調査実施のために予定していた謝金や交通費等を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
法廷通訳の際の言語上の問題や通訳の正確性・等価性についての実態把握、関係者の認識についての調査を実施する。そのために被調査者に対する謝金や調査者の交通費等が必要である。また、調査結果の分析や考察のために、関連図書の購入及び法廷通訳人や外国語の専門家に対する専門知識提供への謝金の支出が必要である。
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