2016 Fiscal Year Research-status Report
地域の多言語化促進要因と担い手に関する国際比較研究
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16K02926
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
糸魚川 美樹 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (10405152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 信行 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (20405153)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多言語化 / 言語景観 / 情報保障 / 通訳 / スペイン語 / 外国語教育 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はおもにつぎの2点を目的としている。 ①外国籍住民の定住化と国外からの観光客の増加に注目し、地域レベルでの多言語化促進要因と使用言語の決定要因、さらには多言語化実践人材の確保という点について実証的に明らかにする、②コミュニティ通訳を養成するための教材開発また人材養成の場という点から、研究者および大学の役割についても検討する。 ①については、商業的には国外からの観光客の急増や2020年の東京オリンピック開催予定により、大都市では急速な多言語化がすすんでいる。一方、多言語対応人材は、「ボランティア」という形態をとることが全国的に広く確認される。ボランティアの活動内容は、観光地の案内、イベントの通訳に加えて、外国籍住民支援をあげているところもある、ボランティアと情報保障の関係について今後実態調査を含めた考察が必要である。 ②とくに、医療通訳について、自治体や地域の国際化協会、任意団体が医療通訳事業を開始している。そのなかで、研修の地域的多様化、検定の複数化がみられる。また2016年度は医療通訳関係のシンポジウムが全国各地で開催されている。そのなかで、日本医療通訳者協会が立ち上がった。通訳者側の声をすくい上げまとめる団体が誕生したことは意義が大きいといえるが、一方で①との関係でいえば、医療通訳事業の通訳者もボランティアであることが多く、患者側の質と機会の保障についての議論がみえてこない。今後は、通訳者-医療機関という関係だけでなく、患者(とその家族)の視点をいれ、情報保障としての医療通訳という側面を強調していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、愛知県など外国籍住民が多く暮らす地域の多言語化状況を調査した。とくに集住地域における言語景観の調査、南米出身者が多く通う医療機関での調査(院内情報と通訳の配置)を実施した。またブラジル人による情報サービス事業、外国籍住民が多く生活する公営住宅周辺商店における多言語化、商品の多様化などにも注目し情報を収集した。10年前の調査と比較すると、都市部では撤去されている注意書き看板がある一方、集住地域の住宅周辺では依然、注意書きの看板が目立つ。また観光地においても、外国人旅行客の増加から、言語景観の変化がみられる。観光地と集住地域の言語景観の比較が今後の課題である。 多言語化を担う人材に関する調査では、都道府県の国際化協会のウェブサイトからデータ収集をおこなった。多くの自治体でボランティアとして通訳者を募集し登録派遣事業をしている。多くは地域の国際交流事業の通訳スタッフとしての活動が主たる活動内容であるが、地域によっては外国人住民支援として、公的機関と住民の間の通訳もおこなっている。ただし、詳細はウェブサイトからは不明であり、今後聞き取り調査が必要である。これについては7月に研究発表を行う。 2016年度は医療通訳に関するシンポジウムが多く開催された。そこでは、地域の医療通訳事業、通訳者の社会的地位、医療通訳の現状などが議論されているが、情報保障としての医療通訳の必要性という視点からの検討が不充分である。上記のボランティアによる多言語化という現状をふまえてみていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1、都道府県の国際化協会におけるボランティア通訳事業の詳細を調査する。通訳登録者数、登録言語、登録条件、活動内容、通訳料の有無、その負担者、トラブルの有無とその解決方法に注目し調査内容を検討する。とくに外国籍住民支援を活動目的としている事業については聞き取り調査を行う。新しく外国籍住民が急増している地域の言語景観の調査を実施する。観光地と集住地域の言語景観の比較を行う。 2、国際比較として、イタリアローマ市における外国籍住民支援サービスの調査を行う。 3、これまで展開されてきたボランティア論の議論を整理する。「ボランティアで担う多言語化」の実態をできるだけ明らかにし、問題を提示する。
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Causes of Carryover |
旅費において、宿泊について知人宅を利用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
録音した記録の文字化および資料整理の目的で人件費を使用する。 情勢の変化により、あらたな国内調査が必要となったため、国内旅費として使用する。
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Research Products
(4 results)