2018 Fiscal Year Annual Research Report
An International Comparative Study on Factors and Pillars that faclitate multilingalism in local communities
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16K02926
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
糸魚川 美樹 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (10405152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 信行 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (20405153)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多言語化 / 異文化メディエーション / 医療通訳 / イタリア |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では、コミュニティ通訳のなかでも医療通訳の実践および研究が、もっとも広く展開されている分野といえるだろう。地域で活動する医療通訳事業が、NPOや公益財団法人を中心に増加しつつある。国際医学会等においても分科会のテーマとなるなど学術的な議論も活発になりつつある。ただし、課題も多い。地域の外国籍住民の言語的多様化が増す一方、それらの言語に対応できる通訳者の養成はすすんでいない。また、医療通訳費用を誰が負担するかの議論も進展がみられない。その一つの理由として、医療通訳とは何か、という定義と理念の合意がなされていないことがあげられる。医療通訳者の役割に関する議論はあるが、医療通訳が利用者(とくに患者またはその家族)にとって何なのか、という議論が十分ではない。また職業としての範囲も不明確である。 今年度はとくに英語通訳に対するヒアリング調査を実施した。その結果、医療通訳事業が増えるなかで、言語的多様性に対応できておらず、英語非母語話者に英語で対応するケースが増えていることがわかった。患者が英語使用者である場合だけでなく、患者の家族や知人に英語で通訳し、家族や知人によって患者の言語に訳し直されるというケースも少なからず確認できている。この状況は結局のところアドホック通訳とかわらず、患者に伝わっているかどうか確認できないという問題がある。 国外については、イタリアのローマ市、トリノ市において計5名の異文化メディエーターにインタビュー調査を実施した。事業としての異文化間メディエーションは、行政による支出に依存する構造があり、財政引き締めの影響を受けやすく、結果として職業としての確立が困難となっており、優れた人材が現場を離れてしまうという問題点も確認された。
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