2016 Fiscal Year Research-status Report
シャドーイングが処理効率・プロソディ生成に及ぼす影響:学習者の注意を操作した効果
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16K02928
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
中西 弘 東北学院大学, 文学部, 准教授 (10582918)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シャドーイング / コンテンツシャドーイング / 意味 / 統語 / 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
シャドーイング(プロソディシャドーイング)が、音声知覚の自動化や構音速度の向上に寄与することが先行研究により指摘されている。科研全体のテーマとしては、シャドーイングの最中に、英語学習者の意識をシャドーイングの内容面(意味・統語・語用論)に向ける(コンテンツシャドーイング)と、(1)意味・統語・語用論側面の処理効率の向上や、(2)プロソディシャドーイング先行研究で確認されたような音声知覚の向上がみられるのか検討することにある。 本年度は、その前段階として、シャドーイング遂行中に、意味・統語・語用論的側面に学習者の意識を向けると、英語音の知覚にどのような影響がみられるのか調査した。 実験参加者は、日本人英語学習者35名(男性10名,女性25名,年齢:19-25歳, 平均20.86歳)で、習熟度テストOxford Online Placement Testを受験した(平均59.23点) コンテンツシャドーイングは、4種類(1通常版 2日本語訳判断課題版 3文法判断課題版 4語用論判断課題版)、各16文の英文が音声提示された。実験文に使用された単語は、親密度5.0以上で、4種類のタスク間で親密度・音節数の平均に差の無いように設定された (親密度 F(3,63) = 2.318, ns., 音節 F (3,63) = .31, ns.) 主な結果は、4種類のシャドーイング間で、再生率に有意な差は見られなかった(F (3,139) = 2.443, ns.)。一方、シャドーイング中に行われた課題の中で、文法判断課題の正解率が有意に低かった(F (2, 104) = 106.602 (p < .01). SH2, SH4 >SH3 (p < .01) ). 学習者にとって処理負荷の高い統語的側面に注意を向けてシャドーイングを実施しても、音声知覚に影響を与えないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に行った実験の結果を、第35回SLRF(Second Language Research Forum)にて口頭発表を行った。Nakanishi, H(2016) Determinant processing factors of English sound perception by Japanese English-language learners during contents shadowing また、その内容を論文としてまとめた。Nakanishi, H(2016) The Effect of Contents Shadowing on English Sound Perception for Japanese English Learners, The JASEC Bulletin, 25, 33-44.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度のシャドーイング課題の枠組みを利用して、リピーティング課題を行う。実験の目的は、リピーティング遂行時に実験参加者の注意を、特定の言語側面(意味・統語・語用論)に向けることで、音声知覚にいかなる影響が現れるのか調査することである。 リピーティング実験文として、4種類(1通常版 2日本語訳判断課題版 3文法判断課題版 4語用論判断課題版)、各16文の英文を用意する。実験文に含まれる単語は、4種類の課題文間で親密度や音節数の平均値に有意差のないように設定する。実験参加者は、1文ずつ音声呈示される刺激文を聴き、リピーティングした後に各種課題に解答することが求められる。 分析は、4種類の課題間で、各種成績(例:課題正解率・解答時間・リピーティング遂行時間)に有意差があるかどうか検討する。さらに、発話者の音声的側面(特に分節音の知覚)に関する分析を行う。具体的には、実験参加者の発話を書き起こし、発話された音節数(音声知覚成績)を4つの課題間で比較する。 平成29年度実施予定のリピーティング成績を、平成28年度実施のシャドーイング成績と比較することで、それぞれの音声復唱課題(シャドーイング・リピーティング)における産出プロセスの違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
1平成29年度のデータ分析に大量の音声分析が必要で、そのデータ整理にまつわる人件費を確保する必要があり、平成28年度のデータ整理にかかる人件費を抑えたため。 2平成29年度に海外発表を科研費で支出する予定であり、平成28年9月の国外学会発表を大学の研究費で支出したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1実験で得られた大量の音声データの整理に必要な人件費に使用する予定です。 2海外学会発表にまつわる旅費として使用する予定です。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 心理言語学2017
Author(s)
西原哲夫編 (編) 第3章中西 弘担当
Total Pages
166 (中西弘 担当72-98)
Publisher
朝倉書店