2016 Fiscal Year Research-status Report
外国語音声の聴取力を向上させるための自律型学習プログラムモデルの構築
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16K02933
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
新倉 真矢子 上智大学, 外国語学部, 教授 (70338432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 晶子 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (10407372)
北村 亜矢子 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (30636262)
安富 雄平 拓殖大学, 外国語学部, 教授 (80210269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国語音声 / 聴取力 / 自律学習プログラム / ドイツ語 / フランス語 / スペイン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人学習者にとって外国語音声の知覚に困難を覚える理由の一つに音変化や音縮約がある。発話中の音が音環境に伴い脱落・弱化・同化する音変化の現象は、英語の発音教育では比較的よく研究されているが、大学の初習外国語(ドイツ語、フランス語、スペイン語など)については、詳しい研究や音声教育への応用がほとんどされていない。本研究の目的は、①日本人のドイツ語・フランス語・スペイン語の音変化や音縮約の仕組みの理論的背景を調べ、②3言語の日本人学習者に聴取実験による実態調査を行い、③3言語の学習者の聴取力を向上させるための自律学習システムを構築することである。3言語を比較することにより、日本人の聴取メカニズムの解明とともに外国語音声の知覚の向上に向けた教育への応用を目指す。 本年度は主に①を遂行するために音変化や音縮約に関する先行研究を調べ、各言語の変異の仕組みをまとめた。3言語の日常語発音では、標準語発音に比べて音変化や音縮約を伴う変異が起こりやすい。変異の種類や頻度は、発話スタイルや発話速度などに影響され、くだけた発話スタイルや発話速度が速いと変異の種類や数が増す。音響音声学的には、第1フォルマント(F1)と第2フォルマント(F2)計測値の差の拡大及び縮小が認められ、調音音声学的には母音空間の縮小、調音動作の重なりが示される。例えばドイツ語のEntschuldigungの非強勢音節entでは、次音節の頭子音 <sch>の円唇性を先取りし、鼻音[n]の直後にある[t]と重なり、[t]が開放されない。音韻的には弱化による中和が起き、音節の脱落が認められる。変異を伴う発話の知覚には、音韻環境、個人の語彙処理能力も考慮に入れる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、音変化や音縮約に関する先行研究をまとめることを主としたが、次年度の課題を先取りし、各言語の聴取実験に着手した。ドイツ語では、異なる発話スタイルに現れる接尾辞<-en>の変異と子音連続中の[t]音脱落の出現頻度には日本人ドイツ語初級学習者と中級学習者との間に差がみられたことから、変異と習熟度に関係があることが推測された。2017年7月‐8月のIDT国際ドイツ語教師学会(スイス)において2件の口頭発表を予定する。 フランス語では、学習者の聞き取りを困難にする、リエゾン、アンシェヌマン、音脱落といった音変化のうち、いずれの現象が日本人学習者にとってより大きな障害になるのかを明らかにするため、自然な発話スタイルを使用しているフランスで出版された会話の教科書を使用し、上級の学生に聞き取り実験を行なった。 スペイン語では、特に音声聴取の練習や学習をしない授業形式でどのくらい聴取力、聴解力が開発されているか確認する調査を専門課程の学生と一般外国語の学生とで実施、さらに音声聴取の練習を経験したグループの聴取力の調査を実施した。この調査結果から、子音の誤聴取、母音の誤聴取、音色の誤聴取、弱化と同化、機能語や機能部の欠落、セグメンテーションの誤り、語や語句の誤りなど典型的な聴取の誤りを抽出し、安富(2017)において類型化を試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には今年度行った各言語の聴取実験の問題点を検証し、引き続き学習者への聴取に関する実態調査に向けて聴取実験を行う。実験結果をもとに検討を重ね、必要であれば再度実験し、2年後の聴取用自律学習システムの構築を見据えた検討に入る。 また、ドイツ語・フランス語・スペイン語に共通する誤聴取の現象と個別言語特有の現象、またそれらを取り巻く要因とをそれぞれ分析して、学習システム全体の構成を検討する。
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Research Products
(3 results)