2017 Fiscal Year Research-status Report
第二言語における定型連鎖の音韻表象の解明:音声知覚における処理効率性への影響
Project/Area Number |
16K02942
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
磯辺 ゆかり 京都精華大学, 人文学部, 准教授 (90760885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 定型連鎖 / 音声知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、定型連鎖を音声で聴いた際に日本人英語学習者がどのように知覚・処理しているのかを、語順適格性判断課題を用いて検証した。外国語として英語を学習する大学生を対象に、Isobe (2011)の刺激リストから抽出した語連鎖120項目を、PCに搭載された心理学実験ソフトSuperLabにより音声提示した。音声刺激作成には、音声合成ソフトウェアNaturalReader Professionalを使用した。本調査においては、語連鎖としてBNCコーパス内できわめて高い出現頻度をもつ定型連鎖40項目、さらに定型連鎖のキーワードのみを入れ換えた低頻度語連鎖である非定型連鎖40項目、高頻度語連鎖の語順をランダムに入れ替えた非文法的連鎖40項目の三種類の実験刺激の音声をそれぞれ文脈から独立した形で提示し、それぞれの表現が文法的に適格か適格でないかを判断してもらうという文法性判断課題を実施した。PC画面上に単独提示された計120項目の反応時間・誤答率を分析した結果、定型連鎖、非定型連鎖、非文法的連鎖の三種類の実験刺激の間で文法性判断における反応速度に差があった。とりわけ、非定型連鎖と非文法的連鎖の二条件と比較して、定型連鎖に対する文法性判断の反応速度は顕著に速く、正答率も高かった。この結果から、高頻度の定型連鎖は日本人英語学習者における音声知覚においても処理効率性が高いということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた定型連鎖の単独提示用の音声刺激の作成に際し、採用した人工音声ソフトウェアに一部不具合が見られた。そのため、語連鎖音声刺激全150項目中の10項目に一部に不明瞭な音素が含まれていた。それらの音声的特徴を再検討した上で、必要に応じて修正および削除を行った。刺激語連鎖内の語数、音節数、単語親密度等の言語処理過程に関わる要因統制のために、BNCコーパス内における高頻度語連鎖である定型連鎖が削除項目に該当した場合は、その項目に対応する低頻度の非定型連鎖および非文法的連鎖の項目も併せて除外する作業を行い、パイロットテストを再度行う必要があった。その為、当初の計画に比べ、若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、音声知覚における文脈内での定型連鎖処理の効率性を自己ペース読み課題の手順に準じたリスニング課題を通して検証する。外国語として英語を学習する大学生30名を対象に、Isobe (2014)の刺激文(定型連鎖・非定型連鎖埋め込み文)を音声提示し、内容理解を求める課題を実施する。文刺激は、心理学実験ソフトSuperLabにより文頭より語単位で提示され、分析対象となる高頻度語連鎖および低頻度の語連鎖のみフレーズ単位で提示される。実験協力者は自己ペースで聴解を行い、一文を聞き終えるごとに内容理解問題に取り組み、指定されたキーを押すように指示される。語連鎖の出現頻度を独立変数として、リスニング課題における正答率および分析対象領域の処理時間を従属変数とした分析を行う。さらに、音声刺激作成におけるポーズ数(有無)・ポーズ長(330ms / 420ms)についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた音声知覚実験の単独提示用音声刺激の一部不具合により修正・再検討が必要となり、パイロット実験を再度行う必要があったため、本実験の開始に若干の遅滞が生じた。そのため、当該年度に予定していた次年度実施予定の文聴解実験で用いる音声刺激の作成に要するネイティブ・スピーカー人件費等の支出が次年度へ持ち越しとなった為。
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