2016 Fiscal Year Research-status Report
英語学習の動機づけと学習者の認知能力を高める小学校でのCLIL教材と指導法の開発
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16K02975
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
酒井 志延 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30289780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小学校外国語教育 / CLIL / 異文化理解教育 / 文字指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
酒井志延が代表の科研研究の目的は,英語が苦手な学習者を減らし英語が使える日本人を養成するために,(1)英語学習初期に,学習者の英語学習の動機づけと学習者の認知能力を高めるCLIL(教科内容言語統合型学習)の日本への文脈化を図ることである。(2)小学校で実際に英語教育活動を実施されている先生と共同で研究し,学級担任でも無理のない,外国語指導法,教材,評価法を開発することである。(3)小学校の先生が,指導しながら,自分の能力を向上していくことが可能な,授業力効能上のめやすを策定することである。この目標に対して,28年度では,研究グループ内での学習会,一般への学習成果発表会を開いた。東京グループが2回(6月25日,8月23日)と名古屋グループが2回(7月9日,8月27日)で,東京と名古屋の合同会議を1回(12月17日)に開催した。研究成果発表会は,3月5日に言語教育エキスポ2017で,連携研究者と研究協力者が,研究成果を発表した。加藤拓由(春日井市立鷹来小学校),樫本洋子(大阪教育大学附属小学校),木澤利英子(東京大学)によるシンポジウム「小学校英語での文字指導について」,安達理恵(愛知大学),北野ゆき(守口市立さつき学園),阿部志乃(横須賀学院小学校)によるシンポジウム「絵本Handa's Surprise による異文化理解と思考力を高めるCLIL 指導法」を行った。また,『言語教師教育』第4巻第1号に,樫本洋子「小学校外国語活動における効果的な児童のリテラシー指導~シンセティックフォニックスを導入して~」と成田潤也(厚木第二小学校)の「小学生目線の実践と小学生目線でない実践」が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行具合であるが,本科研研究の具体的な成果物としては,(1)小学生に対して,教科学習をある程度英語を通して指導し,彼らが英語学習に対する動機づけを高められると同時に,教科内容を通して認知力を高めるためのCLILの指導法と教材,そして評価法を開発する。それらは小学校の教員が「できる」と実感できることを目的とする。 (2) CLIL指導の授業力について4段階のめやすを作る。児童の発達と指導内容を関連させた指導段階が提示されると,教員は指導に入りやすい。CLILでは児童が課題の作品を提出する指導が多い。認知能力を比較的要求されない図工(入門,基礎)を3,4年で導入し,音声英語の素地を作るとともに,協同学習を通しての課題作品作りに慣れさせ,社会科,理科(中級,上級)を5,6年生で導入し,文構造の素地と共に,認知的な力をさらに養成する。 (3) CLILの指導法や教材,そして評価法のアーカイブを作る。欧州でのCLILを支えているのは,指導法,教材,評価法のネット上のアーカイブである。教員は無料でアクセスできる。本研究ではそのような大規模なアーカイブを作成することは困難であるが,Facebook等を使って,CLIL教員が無料でアクセスでき,使用し評価したりコメントしたり,実践のアップが可能なアーカイブを作成し,運営し,将来大規模なアーカイブを作成するためのデータを収集する。 (1)の評価法については,樫本洋子が行っている文字認識テストの開発が中心である。それ以外は,CLILの教材ができない段階では無理なので,順当と言える。(2)についても,教材ができていないと難しいので,この研究の着手はこれからである。一番進んでいるのが,(3)であり,阿部志乃が作成した教材を公開できる用意はできているが,アーカイブをどのネットにどのようにおくかについて検討をしている。 以上全体的には順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最近,公立や私立の中学校1年生の英語担当教員の報告で,小学生から始めた英語教育の弊害が報告されている。ある中学校では1年生の半数近くが英語学習に対して,「好きでない」,または「嫌いだ」と回答している。こういう状況を作る原因は一概に言えないが,一つには英語を学習したいという心をきちんと作る前に,短期間の教育効果を測るために,スキルアップ活動を中心に指導が行われている現状があると考えられる。このスキルアップの教育についてだが,柳瀬陽介(広島大学)は,「人間の認識を,感性・知性・理性と大別した場合, 日本の英語教育は,エビデンス・数値目標などに価値を置く知性が中心になっている」とし,「多くの研究者は感性を軽視している傾向にあるが,優れた実践者は,感性を非常に重視している」という。CLILは,協同学習なので,子供の心と体を使って,お互いが共感しあう学習をすることが可能である。本研究では,子供に外国語を学びたいという気持ちを育てるために,申請書に書いた教材作成はもとより,感性を育てる協同学習についても考えていく。
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Causes of Carryover |
今回,支出金額が少なかったのは,小学校教育を実施している研究協力者の研究グループ化がスムーズに行うことができたことによる。(1) 研究協力者に,熱心に研究している方が多く,教材や資料を十分に保持しており,彼らや彼女らに用意した研究協力費が消費されなかった。また,Facebookで,会議または報告を綿密に行うことができたので,集まっての会議のための交通費や日当を使う必要がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の活動として,(1) 研究協力者が国内外の学会に参加する際の交通費を援助する。(2) 研究協力者が作成した教材を一般の先生が使えるように,有料のストレージの容量を購入し,幅広く研究成果を広める。(3) 外国からの著名研究者を招聘して,国際的な共同研究を実施する。
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Research Products
(4 results)