2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジア儀礼文化の比較史的研究―「物品目録」からの復原的考察―
Project/Area Number |
16K02993
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (60376639)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 物品目録 / 東アジア / 比較歴史学 / 礼制 / 儀礼 / 皇后 / 随葬衣物疏 / 金石文 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、昨年度のうちに史料の収集・整理をおこなったトゥルファン出土の随葬衣物疏、約70点を中心に、「物品目録」から儀礼を復原する研究に取り組んだ。その過程で口頭報告「納棺・埋葬儀礼の復原的考察―劉安志「中古衣物疏の起源と変化」をてがかりに―」(法史学研究会)をおこない、当該分野の専門研究者の助言を得ることができた。研究成果は論文「納棺・埋葬儀礼の復原的考察―トゥルファン出土随葬衣物疏を中心に―」として発表した。 2、礼制・儀礼文化に関する基礎的研究としては、日本古代の皇后をめぐる礼制と儀礼について、新たに取り組んだ。近年ふたたび注目を集めている当該分野の研究史を整理した上で、中国の皇后の在り方との比較を中心に、令規定や皇后儀礼(立后・受賀・先蚕)について検討をおこなった。また持統天皇の事例をとりあげて、日本における皇后制度の成立過程について論じた。その成果は「日本古代皇后制度的形成與中國禮制」と題して国際学会(2017年「世界史中的中華婦女」國際學術研討會)で口頭報告し、投稿した論文は掲載が確定している。また喪葬儀礼に関する個別課題についての検討に取り組んだ。その成果は次年度中に公表予定である。 3、本研究課題とも密接に関わる金石文史料について、関連する学会(韓国木簡学会)への参加や、論文の翻訳(尹善泰「新羅中代末~下代初の地方社会と仏教信仰結社」)をおこなった。また奈良国立博物館・奈良県立美術館・九州国立博物館・宮内庁正倉院事務所・台湾中央研究院などで史料調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心的課題のひとつである随葬衣物疏について、昨年度までの作業をふまえて検討を深め、口頭報告および論文発表をおこない、一定の成果をあげることができた。また今年度新たに取り組んだ皇后をめぐる礼制・儀礼に関する研究についても、国際学会での口頭報告および論文投稿を実現することができた。 金石文に関する研究について、論文翻訳などの形で取り組みを開始することができた。またその他にも礼制・儀礼に関する基礎研究の一環として、喪葬儀礼についての個別的な課題への取り組みを始めたところであり、その成果は次年度中に公表する予定である。 一方で、本年度後半に実施予定であった国内外での史跡・史料調査の一部は、体調不良により実施を延期せざるを得なかった。これらは研究再開後にすみやかに実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果のうち、喪葬儀礼に関する個別研究については、次年度中に論文として発表する予定である。また前年度取り組んだ艇止山遺跡に関する研究成果について、より考察を深めた上で、国外での学会報告を予定している。 研究再開後は、「物品目録」史料の収集・整理を継続するとともに、韓国における金石文調査、中国における史跡・史料調査、国内博物館における拓本・模写資料の調査など、本研究課題に関わる諸資料の調査を順次実現していく。
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Causes of Carryover |
本年度に実施予定であった国内外での史跡・史料調査が、体調不良により実施を延期せざるを得なかったため。調査計画を、先方の事情なども勘案して調査対象の変更など柔軟に対応しつつ、研究再開後に実現する予定である。
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