2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジア儀礼文化の比較史的研究―「物品目録」からの復原的考察―
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16K02993
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60376639)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 物品目録 / 東アジア / 比較歴史学 / 礼制 / 儀礼 / 武寧王陵 / 誌石 / 墓誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、東アジア儀礼文化の比較研究の一環として取り組んだ武寧王陵誌石をめぐる問題について、論文「武寧王妃墓誌の「改葬」」を発表した。中国の墓誌事例を参照しつつ、武寧王妃墓誌銘文の通説的解釈の問題点を指摘し、新たな解釈を示した。本銘文の解釈は、百済喪葬儀礼研究における最重要史料となっており、新解釈によって当該分野の研究に大幅な見直しを促すものと考えている。また日本古代の墓誌についての検討を進め、市民講座「墓誌からみた奈良時代の社会」(トンボの眼、2019年6月16日、於:品川区立中小企業センター)を通して研究成果の社会還元につとめた。 2、礼制・儀礼文化に関する基礎的研究として、日本古代の皇后をめぐる礼制と儀礼について、中国語論文「日本古代皇后制度的形成與中國禮制」を発表した。同論文では、日本における当該分野の最新の研究動向も紹介しており、中国語圏の研究者との建設的な議論に向けた情報提供を心掛けた。また関連する論文(朴竣鎬「日本と韓国の署名・花押比較」、文叔子「朝鮮時代における私人間の契約文書―様式と特徴を中心に」)の翻訳をおこなった。 3、関連史跡・遺物について、国内外での調査を実施した。国内では奈良国立博物館・高松塚古墳壁画仮設修理施設・京都文化博物館・宮内庁正倉院事務所・和歌山県立博物館・白鶴美術館・郡山市立美術館など、国外では韓国の宗廟・国立中央博物館・国立ハングル博物館・国立古宮博物館・国立民俗博物館・景福宮・ソウル大学校博物館・韓国学中央研究院蔵書閣などで調査・踏査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前期には、国内外での調査や研究会参加などを積極的に進めることができ、特に高松塚古墳壁画仮設修理施設での実見調査のような想定外の機会に恵まれるなど、予想以上の成果を得ることができた。ただし本年度後期に予定していた国内外における調査・研究報告の多くが新型コロナウイルス流行の影響で中止・延期となった。また流行に伴う種々の対応に追われ、研究施設の利用も制限されるなど、研究遂行に専念するのが困難な状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度後期から来年度前期にかけて予定していた国内外における調査・研究報告について、事態の収束と研究施設の再開などを待ち、順次遂行していく。具体的には、国外では中国西安における史跡調査、武漢大学における研究報告、韓国益山における史跡調査、慶北大学校における研究報告などを予定していたものの中止・延期となっており、ひきつづきその準備を進めて実施に備える。その他にも、これまでの研究成果を順次、口頭報告や論文としてまとめ、発表していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため、本年度に予定していた中国での史跡調査(1月)および韓国での史料調査(2月)・学会報告(3月)が中止となった。また来年度4月に中国で予定されていた学会報告が中止となり、報告原稿の翻訳費用として確保していたものも使用に至らなかった。国内で予定していた調査・研究会等についても、1月以降は多くが中止・延期となっている。 中国・韓国で予定されていた学会は、ウイルス流行の終息を待って開催するとのことである。また両国における史跡・史料調査についても、事態の推移を見極めた上で、あらためて実施する予定である。
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