2020 Fiscal Year Research-status Report
東アジア儀礼文化の比較史的研究―「物品目録」からの復原的考察―
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16K02993
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60376639)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 物品目録 / 東アジア / 儀礼 / 金石文 / 殯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果としては、「入斂・下葬儀礼復原的考察―以吐魯蕃出土随葬衣物疏為中心」(羅亮訳、劉安志校)が学術誌に掲載され、オンライン版(『吐魯蕃文書研究』公衆号)にも転載されたことで、中国語圏の研究者からの反響を得ることができた。また韓国慶北大学校人文学術院HK+事業団主催の国際学術大会において「東アジア儀礼研究の新視角―「物品目録」の検討から―」と題して口頭報告をおこない、中国吐魯番の随葬衣物疏、陝西省法門寺の舎利荘厳にともなう衣物帳、そして日本の正倉院に残る献物帳をとりあげ、物品目録による儀礼復原の可能性について論じた。 さらに国際研究集会「中国・韓国における古代金石文研究の最前線」(3月18日、オンライン)を主催し(JSPS科研費19H01301と共催)、王海燕(中国・浙江大学歴史系)「浙江省の買地券」、李東柱(韓国・国立慶北大学人文学術院)「新羅の文書行政と印章」(通訳:橋本繁)の2報告をもとに、参加者をまじえて議論をおこなった(参加者23名)。 礼制・儀礼文化に関する基礎的研究としては、近年の殯(もがり)に関する研究を再検討した成果を、「殯をめぐる覚書」と題して口頭報告および論文として発表した。「書評 榎本淳一著『日唐賤人制度の比較研究』」では賤人制と礼制との関わりを中心に論じ、また韓国語論文(朴竣鎬「韓国古文書におけるサインと身分・性別」、文叔子「朝鮮時代の契約文書授受の裏面―本文記の類型と特徴について」)の翻訳を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本来、研究期間の最終年度であったが、予定していた国内外での調査および研究報告は、COVID-19の世界的流行により多く中止となった。そのため研究期間の延長を申請し、2021年度までの延長が承認されている。当初計画どおりの遂行は困難と判断し、調査対象を変更するなど柔軟に対応することで、一定の成果をあげることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の海外における調査や学会報告は、COVID-19のために実現が難しい状況にある。一方でオンライン研究会の盛行もあり、海外在住の研究者を交えての国際研究集会の開催、および日常的な意見交換も可能な状況となってきている。来年度にも国際研究集会の共催を予定しており、ひきつづき計画を柔軟に変更しつつ、可能な範囲での成果公表を目指したい。
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Causes of Carryover |
COVID-19の世界的流行のため、予定していた国内外での調査・研究報告の多くが中止となったため。次年度も海外調査の見通しが立たないため、オンラインによる研究会開催や、調査対象を変更するなど、当初計画を柔軟に変更しつつ対応していく予定である。
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