2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03008
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
永田 英明 東北学院大学, 文学部, 教授 (20292188)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海道蝦夷 / 交易 / 山道蝦夷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、岩手県域を中心とした形で調査・研究活動を実施した。第一には、岩手県三陸沿岸地域における状況について、現地調査を伴う形で研究を行った。とりわけ、陸奥国沿岸部最北端の郡が置かれた気仙郡の状況について、陸前高田市、大船渡市等での現地調査を、またその北方の閉伊地方の状況についても、山田町や宮古市の現地調査をも行いながら、文献資料の検討とあわせて研究をおこなった。その過程で、郡制が施行された気仙地方の特性を、古代においては郡制が施行されなかった閉伊地方との比較、あるいは同じ郡制施行地域でありながら城柵が設置された桃生・登米地方や内陸部との対比という観点で検討した。なおその成果の一部は、2018年2月18日に大船渡市で開催された市民向け講演会「気仙地域の魅力を語るⅣ」における講演「古代蝦夷と「海の道」」において報告を行った。一方岩手県内陸部に関しても、北上川中流域における蝦夷社会の様相に関する研究史の整理および関連資料の整理をおこない、検討課題の整理に努めた。いわゆる終末期古墳の状況と、台太郎遺跡に代表される近年の集落遺跡の成果を、文献上に見られる「村」との関係、あるいは八世紀における山道地方の蝦夷集団と城柵の関係について、『続日本紀』にみえる和我君計安塁の評価などをつうじあらためて検討をおこなった。その成果の一部は、2017年12月17日に盛岡市で介さされた蝦夷研究会20周年記念シンポジウムでの報告「文献史料から読み解く蝦夷」において報告した。 このほか、宮城県内の阿武隈川河口部周辺地域めぐる水陸交通路の問題について、これまでの知見をもとに見解をまとめる作業を行った。その成果の一部は『岩沼市史』通史編の内容に活かすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は当初予定していた岩手県域での調査は、代表者が『北上市史』編纂事業に委員として参加したこと、三陸地方における講演の機会に恵まれたことも手伝って、予想以上に多くの知見を得ることができた。また資料の整理・分析についても、当初の予定通り東北北部の関係資料を中心に再検討を進めることができた。ただしもう一つ、前年度からの課題として予定していた秋田県内での史料調査・検討については、代表者の転職などの事情も手伝い、必ずしも十分に進めることができず、課題が残る形となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、課題として残されている秋田県域に関する調査分析にまず重点的に取り組むこととする。またその作業を通じて、奥羽各地の地域関係の総合的な整理作業をおこない、研究最終年度として、境界領域における地域間関係の構造とその変化について、近年の蝦夷論や国際関係論などの研究動向もふまえながら総括を試みる。その成果については、論文として公表する一方、著書としてまとめる計画があるので、そのための準備作業を進めることとする。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた秋田県内での調査等が実施できず、またその成果を整理するための人件費を使用することができなかったため、残額が生じた次第である。当該経費は平成30年度の計画として繰り越して執行する予定である。
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Research Products
(3 results)