2017 Fiscal Year Research-status Report
平安時代における「国風」的文化現象についての学際的研究
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16K03009
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 全敏 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (20313182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝川 幸司 京都女子大学, 文学部, 教授 (80309525)
皿井 舞 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (80392546)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国風 / 文化 / 和漢 / 海商 / 和歌 / 漢詩 / 仏像 / 高麗 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本年度は研究会を4回開催することができた。第1回目は、渡辺秀夫「国文学研究からみた「国風」の捉え方」、佐藤全敏「国風文化研究をめぐる最近の研究動向」。渡辺報告は和漢比較研究の立場からのものであり、文学における「国風」的現象の根本構造が浮き彫りになった。第2回目は、皿井舞「仏教彫刻からみた「国風文化」」。文学分野で確認された構造との共通性が明るみに出されるとともに、討論のなかでは、今後にむけた新たな研究視角が発見された。第3回目は、前田禎彦「公家法の形成と構造―古代法の変容―」、中込律子「平安中期の税財政構造と律令財政―律令法の「規範性」をめぐって」。平安中期の法体系と税財政構造が、異分野のメンバーに概説されるとともに、法体系・税財政構造それぞれにおいて規範とされているものがいかなるものであったかを析出し、この変容をめぐって討論が行われた。その結果、その変容過程には、文学・美術分野との多大な共通性が発見されると同時に、研究グループ全体にとって、新たな検討視角が発見されることになった。第4回目は、これまでの成果をあらためて文学分野にフィードバックするため、滝川幸司「平安朝漢文学における国風的現象」、李宇玲「平安漢詩からみる国風文化への道のり」の報告を得た。李氏は中国からSkypeによる報告となった。 以上の4回を通じ、多分野を通底する共通要素がいくつも発見されるとともに、今後あらたに注視していくべき問題点が複数確認された。なお今年度からは、国際関係論の視角をもつ仏教史研究者を恒常的なゲストスピーカーとしてお招きすることになった。
2.研究代表者を含む3名が、ワルシャワ大学(ポーランド)の国際会議に招聘され講演を行った。歴史学・文学・美術史学の各立場から、研究成果の中間報告を行った。
3.このほか「醍醐天皇日記」「村上天皇日記」の逸文について、集成した分の校合作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.計画通り4回の研究会を開催し、異なるいくつものジャンルを比較検討することを通じて、「国風的現象」に関して、分野を超えて見出せる共通原理や相違点をいくつも発見することができた。とりわけ、文学という局面と、法体系・税財政構造という国家制度にかかわる局面との間に、共通する原理を見出せたことは大きな成果であった。2.10名以上からなる研究グループであるが、問題の所在をしっかり共有できており、討論を通じて新たな視角がいくつも発見されている。最終年度に向け、望ましい協業状態にある。3.「醍醐天皇日記」「村上天皇日記」の逸文の校合作業に若干の遅れがみられる。これは、地の文と逸文との切り分け作業が当初想定していたより難しかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、年4回の研究会を開催し、これまでと同様、複数分野の口頭報告を8回程度行い、その比較のなかから、分野を超えた共通点・相違点をさらに発見していく。絵画史を専門とする方も、あらたにゲストスピーカーとして今年度より参加していただく予定である(承諾済み)。以上をうけて、年度末には研究成果の取りまとめを行い、研究成果を公開するためのミニ・シンポジウムや成果図書刊行の準備に入る。「醍醐天皇日記」「村上天皇日記」の本文批判については、その新たな方法論を開拓する。特に『西宮記』からいかに逸文を切り出すかについて、方法論を確立することを目標とする。
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Causes of Carryover |
各地で進めている研究の成果を擦りあわせることを目的に、年度末に一回のミニ研究会を予定し、その交通費として残しておいたが、研究会の日程調整がどうしてもうまくいかず、次年度に延期とすることになったため。次年度執行額とあわせて旅費として使用する。
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