2017 Fiscal Year Research-status Report
現地調査を踏まえた「荒ぶる神」の鎮祭伝承の共同研究
Project/Area Number |
16K03013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂江 渉 神戸大学, 人文学研究科, 非常勤講師 (00221995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古市 晃 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00344375)
高橋 明裕 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (90441419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 風土記 / 荒ぶる神 / 祟り神 / 口承 / 祭祀 / 始祖伝承 / 王権 / 地域編成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、各国風土記(逸文を含む)にみえる「荒ぶる神」の鎮祭伝承に焦点をしぼり、現地調査を踏まえた分析をおこなう。それを通じ、屯倉制論や国造制論とも関連付けながら、古代国家形成期の広域権力や倭王権による地域編成のあり方の具体的解明をめざす。研究2年目にあたる平成29年度は、合同調査を3回、合同研究会を2回、また各自が個々の現地調査を実施することにより、以下の成果を得た。 (地域社会研究チーム) 研究代表者の坂江渉が、①古代の神話(神語り)の目的が、現実の祭りの「諸事」の縁起を説くことにより、聞き手をして、その実修に向かわせる点にあり、「荒ぶる神」の伝承がその一環をなすこと、すなわち「荒ぶる神」の鎮祭を司る特定一族の本縁譚として捉えられることを明らかにした。②ただし個々の神話の内容は、祭儀の何らかの縁起について、一対一で固定的に対応するのではなく、複数のものに掛かる点なども指摘した。③さらに従来、単なる開発伝承としてみられてきた『常陸国風土記』の箭括氏麻多智の説話についても、「祟り神」鎮祭の始祖伝承の一類型という、基本的に①の枠組で捉えられる神話断片だと提起した。これらの成果を『ひょうご歴史研究室紀要』3号と『古代史料を読む(上)』にて発表し、関連する講演会で報告した(「淡路島古代史の魅力を探る」シンポジウム)。また研究分担者の高橋明裕は、『播磨国風土記』の「鴨追い伝承」の遺称地が、賀毛郡内の重要遺跡近辺に集中する点に注目し、当該地において、郡ないし里の中心施設が存在したことを論じた(『わたしたちの小谷』)。 (氏族研究チーム) 研究分担者の古市晃が、『古事記』『日本書紀』及び『播磨国風土記』「国造本紀」などの氏族伝承を中心に分析をすすめ、氏族伝承の基層に存在する地域社会と中央支配者集団の関係性の析出に務めた。その成果を『古代出雲ゼミナールⅣ』などに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「荒ぶる神」の伝承比定地の現地調査が、各地の地元研究機関の協力を得て順調にすすんだこと、また『古事記』『日本書紀』『常陸国風土記』などの「祟り神」伝承についても、基本的に本研究の方法・視角で理解できる可能性があるという、当初想定していなかった着想を得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
地域社会研究チームと氏族研究チーム相互間の情報交換を密にとることと、各メンバーが関連する学会や合同研究会などで研究報告をおこなうことにより、研究最終年度に相応しい成果を得られるようつとめる。
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Causes of Carryover |
①『肥前国風土記』と『尾張国風土記』(逸文)の「荒ぶる神」伝承比定地の現地調査と資料調査をおこなう予定であったが、地元受け入れ先の調査機関の都合、および気象状況の悪化のため(大雪)、実施できなかったことによる。②平成29年度末、書籍購入をするため、納品書兼請求書を事務に提出したが、事務方のミスで執行されず、次年度執行に回ったため。 ①について、新年度の早いうちに、当該比定地の現地現地調査と資料調査をおこなう予定である。②について、新年度に入り、執行手続きがおこなわれる予定である。
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