2017 Fiscal Year Research-status Report
宇喜多能家画像賛にみる戦国期在地勢力の武士化に関する研究
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16K03015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 夏来 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (20456627)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 五山文学 / 宇喜多能家 / 九峰宗成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題において設定した研究対象である宇喜多能家画像について、その伝来事情を論考「宇喜多能家画像の伝来事情」にまとめ、『岡山地方史研究』に投稿した。大寺社や大名家に伝来したわけではなく、近世期には村方社会において保存されてきた本画像の伝来経緯をいおおむねあきらかにすることができた。こうした伝来事情の検討を通じ、研究対象である能家画像が、むしろ典型的な中世画像の一例と考え得ることなどを指摘した。この論考は年度内の刊行予定である。 また、主な研究目的である画像賛の読解について、高精細赤外線画像を用いた読解作業と、関連史料の収集とをほぼ終了し、「(仮)室町武士の創出ー宇喜多能家画像賛の検討」と題する論考の執筆に着手した。文書や記録などの補助史料としてではなく、むしろ文書や記録などの読み直しを迫られる史料として、画像賛という史料の特性や価値を捉えようとしている。 なお本研究で撮影作成した高精細赤外線画像は、求めに応じて東京大学史料編纂所に提供し、『大日本史料』9編28の346~349頁掲載の「絹本着色宇喜多能家像」の翻刻に用いられた。この翻刻の成果も、執筆中の論考において、あわせて検討を加える予定である。 また、本研究課題に密接に関連する著書『五山僧がつなぐ列島史ー足利政権期の宗教と政治ー』(名古屋大学出版会)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度の目標は論考の発表であるが、一本は完成投稿にいたることができた。もう一本も、今年度中の執筆完了、発表について、ほぼめどが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
論考の執筆を完了させ、成果を広く公表するとともに、今回の成果をふまえた次なる研究課題の具体化をはかる。俗人画像賛の成立事情に関する検討、五山僧執筆の画像賛にみる諸信仰の統合といった事項に研究を進めることを構想している。
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Causes of Carryover |
研究を遂行するうえで、若干の残額が生じた。最終年度である本年度の研究遂行において、有効かつ適切に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)