2018 Fiscal Year Research-status Report
「琉球王国評定所文書」及び近世先島地方公文書の料紙に関する基礎的研究
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16K03021
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
前村 佳幸 琉球大学, 教育学部, 准教授 (10452955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世琉球史 / 宮古島 / 勤書 / 系図家譜 / 近世宮古島の地方役人 / 跡目相続 / 口上覚 / 近世琉球の楮紙と百田紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世の両先島とりわけ宮古島の研究に特化した。宮古島市総合博物館寄託の染地氏(砂川家)の「勤書」および「系図家譜」の2点の修復を行い、料紙の計測や試料の摘出・顕微鏡観察(分析・撮影)を行った。これにより、料紙の坪量や密度などのデータを得ることができ、料紙原料がコウゾであり混合紙ではないことが分かった。また、修復後のデジタル撮影により、鮮明な印判や裏面、綴じ中の文字を実見することができた。 「勤書」は写しではなく原本であり、蔵元上層の印判について所有者を確定することができた。この「勤書」が八重山を含め現存するものとして最古のものであり、19世紀後半の宮古島・多良間島のものと比較することにより、宮古島の蔵元において、「勤書」の様式に大きな変化がないことを確認できた(「18世紀の宮古島一地方役人の“履歴書”―「染地氏六世勤書」の料紙と様式―」と追加調査による)。 「系図家譜」については、和式の原系図を整理し世代ごとの家系家族の展開を把握するために新たに系図を作成した。また跡目継承に関する「口上覚」の写しについて、宮古島の他の家譜と比較しながら検討を加え、「同姓不養」や母の身分など原理にこだわらない、家系断絶を避けるための実態を明らかにすることができた。これらの成果は「近世宮古島地方役人層の跡目継承―「染地氏系図家譜支流」の口上覚を中心として―」にまとめてある。本系図の掲載期間は17世紀から明治初年に及ぶが、最初から最後までほとんどの丁に朱印の印判があり、王府末期にまとめて作成されたとみられる。印判は首里王府中央のものというよりは宮古島蔵元ものと推測される。 これまで、史資料の内容把握のための翻字が重視され、その資料が研究者においてもっぱら利用されてきた。実物と現状への関心が希薄な傾向に対し、本年度の研究成果は、料紙や印判の観点からの近世先島の文書・古典籍研究の展望を開いたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両先島地方については、宮古島市の文書資料の修復を行い、それに伴う各種調査を行うことができた。試料を分析するスキルを習得しており、論文と見本帳「近世琉球の古文書・古典籍調査資料」作成にも活用することができた。見本帳は関係者に送付しており、今後の研究においても調査の趣旨を円滑に理解してもらうことにつながると考えられる。石垣市でも文書実物の調査のために、所蔵者との交渉を進めており、宮古島から与那国島に至る範囲での近世文書・典籍の研究体系化を構想することができている。 「琉球王国評定所文書」については、「百田紙」が薩摩経由のものと首里で抄造された楮紙の双方が呼称として混在している可能性について意識するべきである。これにより、「百田紙」の使用規定、授受事例、そして現物との照合を行う必要がある。これは鹿児島県や史料編纂所の資料を調査する必要があり、今後別途推進するべき研究課題として位置づけられる。先島地方に重点を置くことで、本研究の料紙分析を軸とする古文書学的研究はほぼ軌道にのったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
近世琉球の芭蕉紙料紙を和紙抄造者とともに調査する(那覇市歴史博物館/久米島博物館)。見本帳「近世琉球の古文書・古典籍調査資料」では、現代的な作例となったので、八重山蔵元制定の「紙漉方茶園方例帳」(1854年)による復元製作も見据えた技術的知見を得る。関連して、八重山博物館収蔵となった「例帳」現物の調査も期待できるようになったので、その料紙について調査する。 引き続き、八重山博物館や石垣市内の個人蔵の文書・古典籍(とりわけ勤書と系図家譜)の料紙に関する調査を行う。近世先島の地方役人・士族層の地方行政と地域社会におけるあり方について史資料を吟味し、史料紹介や論文を作成する。 可能であれば、与那国島おける古文書・古典籍の所蔵と保存状況について実地調査する。 薩摩からの「百田紙」と琉球産の「百田紙」との差異を確認するために、史料上での用例を整理し、実物による所見を得るために、史料編纂所や那覇市歴史博物館所などでの実物調査を行う。 「琉球王国評定所文書」については、史料編纂所所蔵の資料を中心に所見を得る。国立公文書館所蔵分については、修復による冊子分解ができない状況なので、「百田紙」との呼称と関連づけられる資料を調査し検討対象を見いだす。
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Research Products
(2 results)