2017 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代の藩校における音楽教習・楽実践から楽思想構築に至る楽文化の総合的研究
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16K03022
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
武内 恵美子 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 准教授 (30400518)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水戸藩 / 孔子廟 / 釈奠 / 楽 / 琴 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は水戸藩の藩校と琴の教育を中心に研究を進めた。水戸藩は水戸学と呼ばれるように、学問が盛んな地であったが、藩校では音楽が教習されていた。藩校に置ける音楽の教習については、まだ調査途中であるが、中でも水戸藩で特筆すべきなのは、琴の存在ではないかと考えた。 琴は一般的に儒学ととても近い関係にあるが、藩校内や藩校関係者の側でその存在の確認をできる事象は少ない。 水戸は、明末清初の帰化僧、東皐心越が、徳川光圀に招かれて祇園寺の住職となり、以後定住したことが知られているように、江戸時代の琴学の最初期の最も重要な地である。その東皐心越が将来した琴が献上されて、藩邸内に保存されていた。これを巡っての藩内の儒者や琴を愛好する藩外の人物とのやり取りや琴の動向から、あらためて水戸藩と琴の関係性を考察した。これによって、水戸藩における琴の扱われ方やそれをめぐる状況も多少解明することができたと考える。 一方、本年度は機会を得て、中国及び日本国内の孔子廟視察が可能となり、格子生誕の地である曲阜の孔子廟を視察し、また山東省の山東大学で、日本の儒学と音楽についての講演を行った他、南京の夫子廟、上海の文廟、北京の孔子廟、台南(台湾)の孔子廟、台北の孔子廟、沖縄の孔子廟を視察した。また台南では復元された釈奠も視察し、孔子廟を巡る各国の捉え方を検討した。 沖縄では、孔子廟の釈奠のあり方、その際の音楽に関する記録の有無、王宮内での楽の捉え方を調査し、釈奠等の記録が未詳なこと、中国音楽との関係についてもほとんど研究されていない上、それらの資料もほぼないことから、探求は難しいことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに提出した計画は少々変更したが、水戸藩の調査は予定通り進めており、また年度をまたぐ予定であった孔子廟調査も機会を得て実施することができた。 沖縄については、藩校としては入らないが、孔子廟および釈奠、さらには中国文化の輸入という観点からは調査をしておきたい部分であったので、それを実施することができ、また現地にて関係者や研究者へのインタビュー調査ができたことも成果として大きかった。 予定変更をしているので、次年度に持ち越した会津藩などについては、順番が入れ替わったと認識しているため、概ね順調と言えるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、庄内藩および会津藩、また水戸藩の藩校の楽調査についてもさらに進める予定である。 庄内藩は東北の中では弘前藩と並んで楽教習を実施した藩校であることが『日本教育史資料』に記載されており、それがどの程度の規模、範囲で行われていたのかは、把握する必要があると考えている。 また会津藩は、水戸藩と並んで親藩であるため、非常に重要である。浦上玉堂が滞在したこと、玉堂の息子、浦上秋琴も雅楽方として勤務しており、調査を進める必要があると考えている。 また、水戸藩の楽教習状況も昨年度に引き続き調査することで、他藩にも大きな影響を及ぼした水戸藩における楽に対する姿勢を考察する予定である。 これらによって、今年度は、関東以北の藩校における楽教習の実態解明を目指す。
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Causes of Carryover |
2月末~3月上旬に調査を予定していたが、実施できなかったため、繰り越した。
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