2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03023
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
朴澤 直秀 日本大学, 法学部, 教授 (70377696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新地建立 / 談義所 / 中本寺 / 寺院史料 / 寺社奉行 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、寺院関係史料の調査、寺社政策関係史料の調査・分析などを進めた。とりわけ、寺社政策関係史料の分析から、新地(新寺)建立の制限、すなわち幕府による、新規の寺社ないしは寺院の建立の制限に関する知見を深め、位置づけを考察した。 それにつき、佛教史学会学術大会合同部会において「新地建立禁令をめぐって」を発表した。この報告では、まず、元禄期に至る新地建立禁令をめぐる諸動向についての整理を行った。そして、その後の新地建立禁令に対する認識や、「引寺」の規制をめぐる諸動向などを検討した。さらに、都市史・神社史に関する研究で言及がなされてきた、都市における古跡地・古跡並の認定、宗教施設の建築規制、町道場をめぐる問題などと、新地建立禁止との関係などにも考察を広げた。 連携研究者・研究協力者と共に、近江国柏原の天台宗談義所・中本寺、成菩提院の史料調査を進めた。成菩提院や近江を含む畿内近国における豊臣政権の寺社政策について、連携研究者の林晃弘氏による口頭報告「近世前期北近江の寺社」(近世の宗教と社会研究会例会、2016年6月18日、於滋賀県長浜市つづらお荘)および論文「朱印地形成と秀吉の寺社政策」(『ヒストリア』257)を得た。また、成菩提院と、近世天台宗において重要な戒律をめぐる動向との関係について、連携研究者の曽根原理氏による口頭報告「成菩提院と安楽騒動」(近世の宗教と社会研究会例会)を得、さらに近世近代移行期に関する史料紹介「明治二年成菩提院第四十五世孝健『入院諸記録』」(『東京大学史料編纂所研究紀要』27)を得た。 さらに、堺市立中央図書館、大阪府立中之島図書館などでの史料調査や、寺社奉行関係の史料の収集を行い、上記の「新地建立禁令をめぐって」に成果の一端を反映させた。また、中近世移行期の寺社をめぐる宗教秩序の変容に関して、幡鎌一弘氏の著書『寺社史料と近世社会』の書評を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研の目標の一つとして、必ずしも教団によらない寺社・宗教者の把握に光を当てるという点がある。新地建立の制限に関する研究は、それに関する一つの軸となるものであり、それについて口頭報告というかたちで見通しを示すことができたことは大きい。 また、成菩提院史料の調査に関しても、近世のみならず近代文書にも整理の手を広げることができ、調査完了に向けての見通しを立てつつある。以上より、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新地建立の制限をめぐる研究については、口頭報告を行った内容に、それをめぐる質疑や、史料解釈の再吟味、提示できなかった部分の検討などを含め、さらに研究を進め、論文としての公表を目指す。 寺院史料の調査については、成菩提院を中心に、引き続き連携研究者や研究協力者の参加を得、遂行していく。所蔵者の意向に配慮しつつ、成果の公表も目指していきたい。
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Causes of Carryover |
概ね順調に経費を使用したが、1万円程度の若干の残額が生じたため、翌年度の助成金と併せて有効に活用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画通り、翌年度の助成金と併せて、調査旅費、史料収集費用などとして使用する。
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Research Products
(2 results)