2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03023
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
朴澤 直秀 日本大学, 法学部, 教授 (70377696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 成菩提院 / 越前四箇本山 / 小規模教団 / 寺院制度 / 教団構造 / 寺檀制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて、研究代表者独自で、福井県文書館・福井県立図書館において史料・文献調査を行い、さらに京都府立京都学・歴彩館で史料・文献調査を行って、全国的教団に包摂されない真宗の地方的教団についての分析を進め、研究成果を論文「近世における「越前四箇本山」とその教団」として公表した。当該論文では、教団組織や修学課程などに論及したほか、四箇本山各自の天台宗門跡との関係が教団存続のための要件ではなかったこと、幕藩領主との上申下達ルートが複線的なものであったこと、などを明らかにした。 また、近世の教団構造や寺院をめぐる諸関係をどう捉えるか、という点や、寺檀制度をめぐる通念の問題について、『日本宗教史のキーワード:近代主義を超えて』及び『カミとホトケの幕末維新』に原稿を執筆し、さらに国際学会(AAS 2019年次大会)のパネルディスカッション「Religious Power in Early Modern Japan: A Tool of the Shogunate? 」において、「The Temple Registration System: Conventional Wisdom and Forged Laws」を発表した。 研究協力者と共に遂行した史料調査として、前年度までに引き続き、滋賀県米原市の天台談議所で中本寺の成菩提院について、近世・近代史料に関する史料調査を2回実施した。史料整理・概要調査を進めると同時に、本研究の研究テーマに関わる知見の交換などを行い、その結果が研究協力者による別掲の研究成果に反映された。 さらに、研究代表者独自の調査として、新発田市立歴史図書館、新潟県立文書館において、寺社関係・寺社政策関係史料の調査を行い、知見を得た。これらの調査成果について、さらに分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文「近世における「越前四箇本山」とその教団」において、従来行われていなかった実態分析から、これまでの諸研究において全国的教団の様相を前提として考えられてきた教団統制論・教団構造論の、見直しの端緒となる視点を提示することができたのは、本研究において大きな成果であるといえる。また、幕府の「宗教政策」の捉え直しをめぐる論点について、米国における国際学会において意見交換を行うことができた。さらに、成菩提院調査においても順調に史料の調査・整理を進めることができた。以上に鑑みて、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
成菩提院調査については、研究協力者と共に前年度同様に進めていく。最終年度となるので、後継的・補遺的調査に向けた成果・論点の整理や、調査成果活用の方途の検討など、所蔵者の意向に配慮しつつ、研究協力者と検討を進めていく。さらには、研究協力者との知見交換もさらに積極的に行っていく。そして、かかる知見の交換なども踏まえつつ、比較史的な視点なども意識し、研究代表者としての研究成果の敷衍に努めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度順調に研究を推進したが、成菩提院調査において、ややのべ参加人数が少なかったために残額が生じた。現在調整中の今年度初回調査では参加人数を十分確保できる見込みであり、かかる状況を踏まえて、翌年度分として請求した助成金と併せて、調査旅費、史料収集費用などとして使用する。
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