2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03029
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
鍛治 宏介 京都学園大学, 人文学部, 准教授 (50512745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水戸藩 / 大日本史編纂記録 / 大串元善 / 井上玄桐 / 遣迎院応空 / 小野沢長貞 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代に水戸藩が収集した史料の全容と、京都における史料収集の実相を、京都大学総合博物館が所蔵する「大日本史編纂記録」などの分析に基づき解明することを目的とする本研究において、平成28年度は、「大日本史編纂記録」記載史料の索引の作成に取り組み、また「大日本史編纂記録」の翻刻を進める作業を行い、一定の成果を得た。大日本史などの各種編纂作業を行うなかで水戸藩の人々が京都の公家の諸文庫を初め、全国の寺社の記録を調査した際の一次史料として、経過が詳細にわかる「大日本史編纂記録」は、水戸藩のみならず、水戸藩の調査先の史料所蔵状況の一端をうかがうことができるが、古典籍名が大日本史編纂記録のどこに記載されるかを明らかにする索引により、当該の記事に容易にアクセスすることができるようになる。 翻刻作業については、現在、「大日本史編纂記録」のなかでも後期の編纂事業のなかで当時史館に保存されていた書翰類などを人名ごとに整理して書写された史料である書状案のなかから、第二一五~二一六冊(「大串一」「大串二」)、第二二〇冊(「井上」)、第二二二~二二四冊(「遣迎院」「小野沢」「安藤」)、第二四二~二四三冊(「京都御許借本証印」「館本写贈品目」の計八冊の翻刻を終えた。それぞれ大串元善、井上玄桐、遣迎院応空、小野沢長貞・介之進親子、安藤為実という修史編纂事業で大きな役割を果たした人物であり、特に京都で活躍した小野沢は、出自も含めてほとんど注目されておらず、今後、研究を進めていく必要がある。 なお本研究の主たる研究対象である「大日本史編纂記録」は、二〇一七年度より国の重要文化財の指定をうけることとなった。文化財指定にあたり、申請者も文化庁による京都大学総合博物館における事前調査に協力を行ったが、この指定にともない本史料の保管先が京都大学文学部から京都大学総合博物館に変更されたことも付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「大日本史編纂記録」記載史料の索引の作成については、平成28年度において、一通りの作業を終えて、平成29年度に分析を行う予定であったが、まだ索引の完成にはいたっていない。研究代表者の本務が忙しく、当初の想定より、当該作業に時間を割くことができていないことが原因となる。 また「大日本史編纂記録」については平成28年度に15冊程度の翻刻を進める予定であったが、半分程度の進捗状況にとどまってしまった。翻刻作業を進めるにあたり、雇用をしている臨時職員が忙しく、この作業に勤務時間を十分あてることができなかったことが原因となる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で先述したように、本研究の対象である「大日本史編纂記録」が国の重要文化財に指定されて、保管先も京都大学文学部から、京都大学総合博物館に変更されたが、本研究の推進には特に支障はないので、今年度も、当初の計画に則って研究を推進する。平成29年度は、次の3点の研究を平行して進めていく。 ①「大日本史編纂記録」収録史料の索引の完成・分析、②水戸藩による京都における史料収集活動の検討、③「大日本史編纂記録」の翻刻の3点である。まず昨年度に完成する予定であった①「大日本史編纂記録」に現れる古典籍の索引を完成させて、その分析を進めていく。 さらに昨年度の「大日本史編纂記録」の翻刻の成果もいかしながら、②水戸藩による京都における史料収集活動について、特に、水戸藩から派遣された商人佐藤有慶や、京都で藩士として採用された小野沢親子などに注目しながら、その分析を進めていく。 また③大日本史編纂記録の翻刻については、平成28年度に当初の予定通りには進めなかったので、平成29年度は臨時職員の人員を増員しながら、28年度の遅れを取り戻しながら、進めていきたい。
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Causes of Carryover |
「大日本史編纂記録」の翻刻作業を委託していた臨時職員が、当初の予定より、この作業に勤務時間を割くことができず、この職員に支給する予定でいた人件費が、当初の予定より減少したために、その分の次年度使用額が生じた。また3月に予定していた、関東方面での出張調査が、研究代表者が、本務で忙しく、出張の時間をとることができず、平成29年度に延期することになったために、その分の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額をあてて、翻刻作業にあたる臨時雇用の人員を増員して雇用することで、平成28年度の遅れを取り戻すことを予定している。また平成28年度に実施できなかった調査を、平成29年度に実施することで、使用することを計画している。
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