2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Historical Collection Activities in the Mito Domain
Project/Area Number |
16K03029
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
鍛治 宏介 京都先端科学大学, 人文学部, 准教授 (50512745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水戸藩 / 大日本史編纂記録 / 徳川光圀 / 佐々宗淳 / 那須国造碑 / 上・下侍塚古墳 / モニュメント / 湯津上村 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、江戸時代の水戸藩において進められた「大日本史」などの編纂事業に関わって、編纂の中心メンバーであった史館総裁らが取り交わした書簡の下書きなどからなる「大日本史編纂記録」全248冊の翻刻をすすめた。「大日本史編纂記録」全248冊は、二代藩主徳川光圀を中心として、江戸時代前期、延宝期より正徳期まで進められた活動の記録が中心となるが、大別すると佐々宗淳や、安積澹泊ら史館総裁らによる書状の自筆下書きである「書状案」と、それらの書状原本や書状案を、江戸時代後期に書き写した「書状写」からなるが、本研究では、このうち「書状写」の翻刻作業を進めた。今回の研究により、「書状写」46冊分(186、194~204、210~237、242~247冊)の翻刻下作業を進めることができたのは大きな成果であった。ただし、研究代表者による翻刻全体の確認作業を終えることはできなかったため、公開にまではいたらなかった。 また水戸藩による史料収集活動の実態解明のために、水戸藩が17世紀末に行った「那須国造碑」の整備と、上・下侍塚古墳の発掘という事業に着目して、江戸時代に藩権力により行われた文化財保護活動と、その文化財が地域社会に与えた影響を明らかにすることができた。光圀の領内巡見の際に、偶然、飛鳥時代建立の古碑の存在を知り、佐々宗淳を現地に派遣し、地域の有力者大金重貞を中心として古碑を囲む堂舎を建立させた。さらに古碑の顕彰者を明らかにするという学術的意図のもと、近隣にあった古墳の発掘調査も行った。地域内に立ち現れた「那須国造碑」というモニュメントの管理は近隣在住の大金氏に任され、当初は古碑が立つ湯津上村は積極的に関与しなかった。しかし村も次第にこの古碑を、村を荘厳化する存在として認識するようになり、19世紀に新たに課せられた助郷の免除運動のなかでは、この古碑を積極的に活用していたことを明らかにした。
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