2018 Fiscal Year Research-status Report
中世東国における寺院什物帳(文物台帳)と請来遺物(唐物)の発展的研究
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16K03032
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
古川 元也 日本女子大学, 文学部, 教授 (60332392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世 / 東国 / 唐物 / 什物帳 / 寺院 / 請来文物 / 室町時代 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、研究最終年度とした3年目は、これまで調査で漏れていた寺社史料の調査、および伝世文物との関連を調査した。また、屏風下張りとして発見された新出資料についても、寺院伝来文書の使用法の観点から調査と研究を進めた。参照資料としては個別寺社のほか、京都国立博物館等の収蔵史料も検討対象とした。京都国立博物館では羽田聡氏の協力を仰いだ。東寺や醍醐寺といった寺院の史料も看過できないが、本務である日本女子大学では醍醐寺における資料調査の伝統もあり、資料の知見を得る上で有利作用した。美術・工芸・考古分野の遺品研究はそれぞれの研究成果を援用、協業しながらデータ集積に努めるた。上記国立博物館のほか、府県の埋蔵文化財センターの調査報告書等も参照してデータの集積につとめた。 なお、年度の研究成果の大きな部分としては、神奈川県立歴史博物館で「鎌倉ゆかりの芸能と儀礼」展(2018年10月27日から12月9日)を開催し、寺社に伝わる什物帳の意味を展示を利用して広く観覧者に還元した。この展示は信仰の継承がモノと文字資料が相まって可能となること、ひいては、それにかかわる多様な資料が内包する、豊かな世界を明らかにしたもので、名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センターで5年間にわたって行われた「宗教テクスト遺産の探査と綜合的研究―人文学アーカイヴス・ネットワークの構築―」の研究成果をも反映するものであり、同時期に国文学研究資料館、國學院大學博物館、神奈川県立金沢文庫で開催された展示(人間文化研究機構 博物館・展示を活用した最先端研究の可視化・高度化事業『列島の祈り』)と相互に連携したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していたよりも、什物帳の種類が多岐にわたり、また内容解読にも相応の時間を要したため、研究の進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果は、一般学術誌、学内誌への掲載、報告書によって公表されるほか、博物館との共催を得て、展示で最新の研究成果として反映される予定である。博物館での報告は、実物資料と歴史史料の相互検証の場としては最も適切な国民への還元の方策であると考えている。 本研究の手法はこれまでの継続的な研究によりほぼ確立しているので、経費的には基礎研究、発展研究段階と研究方針およびそれに伴う経費自体にも大きな変更はないが、最終年度である本年度は、研究成果の報告を印刷媒体および展示等の活動を通じた公開で行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究では、中世東国に所在する寺院什物帳(文物台帳)と請来遺物(唐物)の伝存や、相互関係を、実物史(資)料の調査に基づき、明らかにすることを目的とした。調査が進行するにつれ、一連の史(資)料が数多く報告され、その分析に予想以上に時間が掛かることが判明した。最終年度に、義務的ではないものの報告の公開性を増すために報告書刊行を予定していたが、その内容を精緻にするために一層の時間が必要となったため。
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