2019 Fiscal Year Annual Research Report
An Evolitionaly Research for the Documents of Valuable Goods in Medieval East Japan.
Project/Area Number |
16K03032
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
古川 元也 日本女子大学, 文学部, 教授 (60332392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世 / 東国 / 寺院 / 什物帳 / 請来 / 唐物 / 出土遺物 / 伝世資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間で明らかにしようとした目標は、次の4点である。1.中世前期に受容された宋元文物を史料的に把握する。2.特に政権がおかれた東国領域でどのように記録されてきたかを明らかにする。3.伝世文物、出土遺物の両面から輸入された文物の実体を把握する。4.諸史料に現れる「唐物」と実体との比較検討をおこなう。本研究については、すでに基礎研究の報告書を刊行したこともあり(250冊あまりを各大学図書館に発送済み)、問題解決の方策、手順は明確であった。 実際、本研究では次のような学術的特色・独創性を示しえたと考えている。1.中世社会に受容された「唐物」の実体を、政権がおかれた中世東国領域の史(資)料を中心に明らかにする点。研究代表者の本務が申請当時、神奈川県立歴史博物館であった点が有効となる。 2.禅宗寺院のみならず、東国領域の中世寺院に残された什物帳(文物台帳)等を広範囲に横断的に検討材料とする点。研究代表者のこれまでの寺院史料を扱ってきた経緯が有効となる。3.後世の改変や編纂を受けやすい什物目録に対して、史料に対する検証を厳密に行ってゆく点。研究代表者がこれまで行ってきた史料論の研究が有効となる。 4.近年、美術史学、考古学の分野で大きく深化した研究成果との接点を見出そうとする学際研究となった点、である。 結果として、1.これまで一部什物帳(文物台帳)の分析に偏っていた「唐物」研究を、東国領域の寺院什物史料へと広げることにより、中世前期の横断的・面的な理解につなげた。2.漠然と用いられていた「唐物」概念を明確化することにより、中世における宋元時代舶載文物の特質を際だたせることができた。3.「唐物」が記載される什物帳を精密に検証することにより、寺院における文物台帳そのものの史料論的検討をおこなった。4.寺院に伝来し、また遺跡から発掘される中国宋元時代の文物の実体を什物帳と比較検討できた。
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