2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03033
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
前嶋 敏 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (30373476)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 武家文書群 / 伝来 / 越後 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世に作成された文書およびそれを含む文書群の全体像と、それに対する家の認識について、とくに中世越後に盤踞した武将の家を中心に、伝来の観点から通時代的に明らかにすることを目的としたものである。平成29年度は、平成28年度に小泉庄色部条(新潟県村上市)をおもな拠点として活動していた色部氏、および白河庄(新潟県阿賀野市)をおもな拠点としていた安田氏にかかる文書群を中心に検討を行ったこと、また本研究の過程で色部氏関連文書原本の所在(個人所蔵)が確認されたことから、上記個人所蔵の色部氏関連文書検討の補遺ならびに三浦和田氏(黒河氏、奥山庄)にかかる文書群(新潟県立歴史博物館所蔵)を中心に、中近世文書に関する管理状況の概要、全体像の確認、また文書の移動に関して、研究協力者等とともに調査会ならびに研究会を実施し、検討を行った。 このたび確認された色部氏に関する古文書群は、かつて知られていたものの、しばらく所在不明となっていたものであり、その原本が確認されたことは重要である。本文書群は当主の譲状・願文等、同家の由緒・系譜認識等において重視すべき文書を多数含むものであり、この一群の性格ならびにその伝来経過は注目される。そこでこの文書群について、同家に伝わった江戸時代作成の写本集との比較等により、伝来状況のあとづけを行い、また近代以後の移動状況を明らかにした。また三浦和田氏に伝来した中世文書群については、まず現在「三浦和田氏文書」と名付けられた古文書群に含まれる古文書の多くに当主宛てではない文書が多数含まれていること、近代の所在状況等の検討から、その形成過程・伝来過程を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、とくに越後下越地域に盤踞した武将(揚北衆)にかかる文書群について、その武家ごとに調査を進めていくものである。今年度当初には、三浦和田氏(中条氏)および鮎川氏等の文書群について検討し、28年度成果と比較検討を推進することを計画していたが、色部氏にかかる古文書原本の所在があらたに確認されたことから、今年度はそちらを優先することとし、また三浦和田氏(中条氏)に関しても、全体の進展状況に鑑みて、同族の黒河氏にかかる古文書群を優先して検討することとした、という若干の変更はあるものの、これまでの2年間で安田氏(白河庄)・色部氏(小泉庄色部条)・三浦和田氏(黒河氏・奥山庄)等に伝来した文書群についての検討を進めてきている。そして、それぞれの家における文書の管理方法、伝来状況等を具体的に明らかにしており、家ごとにその特徴を把握してきている。本研究は4年計画で、平成29年度で半分を過ぎたところであるが、文書群の検討に関しては、全体としておおむね順調にしているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までにおいて、安田氏(白河庄)・色部氏(小泉庄色部条)・三浦和田氏(黒河氏・奥山庄)にかかる文書群等について調査・検討を行った。来年度には、まず中条氏(奥山庄)等に伝わる文書群、また鮎川氏等について検討することとしたい。そして、それらを統一的に把握しなおすことから、各家の伝来状況、武家における現用文書・非現用文書に対する認識、また家の由緒や系譜認識に関する特徴等を地域的なまとまりとして通時代的にとらえなおすことを試みたい。
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Causes of Carryover |
3月末に調査を実施した際、参加人数が予定から変更されたため、その分の差額が生じた。差額については今年度補充調査を実施して執行する計画である。
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