2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03034
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 佐渡金銀山 / 鉱山技術書 / 佐渡金銀山絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も引き続き国内に散在する佐渡金銀山技術書と佐渡金銀山絵巻の調査を行った。佐渡金銀山技術書については、翻刻作業を進め、新規調査史料が技術書群全体でどのような位置づけになるのか検討を加えた。特に、昨年度に引き続いて、これまで19世紀の成立とされてきた彩色図入りの技術書「金銀山大概書」(相川郷土博物館所蔵)の類本の検討を進め、その原本の成立が18世紀前期に遡ることなどをより明確にし、学会で報告した。 佐渡金銀山絵巻についても、複数の新規史料を調査できた。とりわけ、肥前国松浦藩主・松浦静山が佐渡奉行・根岸九郎左衛門鎮衛(在任期間:1784~1787)の所持していた絵巻を、1787(天明7)年に江戸で筆写させた由緒のある絵巻(松浦史料博物館所蔵)が特筆される。また、同じく佐渡奉行・室賀図書正明(在任期間:1787~1793)の所持していた絵巻の写と考えられる絵巻も見いだせた。これらは、佐渡金銀山絵巻が佐渡奉行用に制作され、帰府する際には土産として江戸に持ち帰られたとする説を裏付け、また写本化の具体的事例として重要な史料である。 佐渡金銀山技術書群と佐渡金銀山絵巻群の連関については、未だ不明な点が多い。100年以上にわたって制作され続けた技術書群と絵巻群には、それぞれにその時々の経営・技術の変化が反映されていることは確認できている。しかし、後者が佐渡奉行や組頭(佐渡奉行の補佐役)の交代の度ごとに制作されたと考えられるのに対し、前者の制作のタイミングは未解明であり、引き続き検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予想していた分析対象の佐渡金銀山技術書の数が約50点から80点以上に増加することがわかり、新たに分析する必要が生じた。また、個々の佐渡金銀山技術書が予想以上に大冊で、分析に時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで未調査の佐渡金銀山技術書と佐渡金銀山絵巻の調査および画像撮影を進める。とりわけ分量の多い技術書の調査に重点を置く。基準となる年紀のある技術書の分析を翻刻作業などを通してより進め、年紀のない個々の技術書の内容をそれらと比較して年代を推定し、18世紀中頃から幕末期頃までの100年以上にわたって制作された技術書群全体のなかに位置付け、技術書群の構造を総合的に明らかにすることを目指す。 そして、佐渡金銀山技術書群と佐渡金銀山絵巻群の連関については、それぞれの記述・描写に関する連関の他に、制作時期、制作主体、制作目的に関する連関といった点も視野に入れながら解明を進める。
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Causes of Carryover |
当初予想していた分析対象の佐渡金銀山技術書の数が約50点から80点以上に増加することがわかり、新たに分析する必要が生じた。また、個々の佐渡金銀山技術書が予想以上に大冊で、分析に時間がかかり、補助事業の延長を申請した。 次年度使用額は、未調査史料の調査旅費や撮影委託費、報告資料印刷費などに充てる予定である。
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