2017 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における長期軍備拡張計画が及ぼした政治経済的影響に関する研究
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16K03035
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
池田 憲隆 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (60183159)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 軍備拡張計画の実施過程 / 艦船輸入 / 清国海軍 / 艦船技術革新 / アームストロング社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は艦船外国発注とそれに関連する技術導入の過程についての検討をおこなうことに重点をおいた。その成果は、研究発表「1883年度以降の軍備拡張計画に基づく日本海軍艦船輸入について」(政治経済学・経済史学会、秋季学術大会、自由論題、於;大阪商業大学、2017年10月20日)と、「1883年度以降の軍備拡張計画に基づく日本海軍の艦船輸入について(上)」(『人文社会科学論叢』第4号、2018年2月)において公表した。なお、上記の論考は完結していないが、(下)の論考執筆はほぼ完了しており、この時期の艦船輸入に関する検討は基本的に終えたと考えている。 これらは、1883年度以降の長期軍備拡張計画に基づいて実施された日本海軍の艦船輸入の特徴を考察する前提として、まずは広範な研究文献や資料に依りながら、一方で清国艦隊の状況を分析しつつ、他方で同時期の世界的な艦船技術進展や仕様変化の特徴を検討した。次に、輸入契約書を具体的に分析して発注の特徴を明らかにしたうえで、その建造過程の諸特徴について考察した。 その結果、次のような諸点が明らかになった。1)海外からの艦船輸入実績が乏しかった日本海軍は予算が保証されていたにもかかわらず、輸入決定に手間取った。2)輸入決定が遅れた理由は日本側の準備不足という面があったが、ヨーロッパにおける技術革新や艦船アーキテクチャの変化という面も関係していた。3)これらはその後の艦船輸入に対する重要な経験となるとともに、技術導入の契機にもなったという点で、その後の艦船国産化に大きな意義を有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軍拡計画の成立経緯については、一昨年度にほぼ研究を終了した。軍拡計画の実施に基づく艦船外国発注とそれに関連する技術導入の過程については、昨年度においてほぼ研究を終了した。これによって、国内艦船生産体制についての制度的変化および技術者・労働者の存在形態の検討が主要課題として残されているが、これらについてはすでに部分的に着手しており、おおむね予定の範囲で推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は軍拡計画の中断期(1889-95年)における国内・国外の艦船建造構想とその実施過程を検討しつつ、国内艦船生産体制についての制度的変化および技術者・労働者の存在形態、さらにはその後の技術導入過程の特徴について分析する。さらに、それらが日清戦争後の軍拡計画の成立といかに関係したのかという点を中心として総括をおこないたい。
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Research Products
(2 results)