2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on policies to keep foreign ships away by force in the first half of the 19th century
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16K03043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩崎 奈緒子 京都大学, 総合博物館, 教授 (80303759)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鎖国 / ロシア外交 / 蝦夷地見分 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、論文執筆と史料分析の二つの作業を進めた。 まず、論文については、計画に掲げた第一のテーマから派生した問題についての論文執筆を行った。具体的には、対ラクスマン外交において、異国船打ち払いの「国法」を主張する一方で、長崎において通商開始の交渉に応じる余地を残した幕府が、対レザノフ外交において、通商拒絶へと方針を転換した契機が、志筑忠雄の「鎖国論」にあったことを解明した。明治期以来の課題とされてきた鎖国祖法化の画期を確定させる成果であることから、昨年度の成果と合わせて、『近世後期の世界認識と鎖国』と題する論文集に収載することとし、2021年5月末に刊行する予定である。 史料分析については、新出の「蝦夷地一件」について検討した。これまで「蝦夷地一件」は、内閣文庫所蔵本が天明期蝦夷地政策の基本資料として活用されてきた。昨年度の研究により、京都大学文学研究科所蔵本には内閣文庫本に含まれない一之巻と四之巻の2冊が含まれることが明らかになったことから、その内容分析を行ったものである。一之巻の分析により、天明の蝦夷地見分が実施された理由に、安永期の松前藩とロシアの接触に関して詳細な情報を幕府が把握したことがあることが、初めて明らかとなった。四之巻は、松前藩の妨害や地理情報が皆無である中での見分が、困難を極めたことを赤裸々に伝え、蝦夷地政策の実務解明という点で有用な史料であることが明らかとなった。これまで失われてきた2冊の発見は研究史上大きな意義があるところから、翻刻を進め、2021年3月にその成果を『蝦夷地一件(京都大学文学研究科蔵)の紹介』と題する研究成果報告書として印刷した。次年度、「蝦夷地一件」を所蔵する図書館等に配布し、学界の共有物とする予定である。
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