2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横田 冬彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (70166883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有坂 道子 京都橘大学, 文学部, 准教授 (30303796)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近世医学 / 京都 / 百々漢陰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸中期から禁裏御殿医をつとめた百々家の史料を調査・分析することによって、近世京都の医療事情や医学書研究の実態を明らかにすることを目的とする。初年度は、主たる調査史料となる百々家所蔵文書の整理・目録化をおこない、その解読にとりかかった。 (1)百々家所蔵文書について、調査補助員を雇用し、A画像・軸物、B別置分、C大型木箱収納分、D漆塗箱収納分、E小木箱収納分、その他にわけ、文書の整理、目録の作成をおこなった。また、全点の写真撮影を完了した。 (2)前項の史料のうち、Cに含まれる「書翰等貼込帳」4冊については、そこに貼り込まれた数百点の書翰や漢詩文などすべてについて、1点づつの目録を作成した。 (3)次いでそれらの書翰の解読を、研究代表者・分担者ほかによって、定期的に研究会を開催してはじめた(9月2日・23日、11月25日、12月27日、2月25日、3月28日)。ただ、書翰史料の解読はきわめて困難で、かなりの時間を要することが明らかになりつつある。しかし、それらによって、19世紀前半の百々漢陰・鳩窓父子の、京都のみならず大坂・江戸を含む医者・儒者等との広い交流を看取することができ、医学書の普及状況や、漢詩文をはじめとした教養のあり方などが明らかになりつつある。 (4)京都大学附属図書館所蔵の百々家旧蔵の書籍史料については、仮目録を作成したのみで、詳細目録や分析はなお手つかずのままである。 (5)そのはか各地に残る百々家著作書籍の普及や、門人・弟子たちの実態については、いくつかの手がかりを得るにとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度作業として予定していた、百々家所蔵文書の整理、全点目録の作成、写真撮影などは終了することができた。しかし、そのうちの書翰史料の解読は、定期的な研究会を開催しつつ、もちろん当初から3年間にわたっておこなうことを予定してはいたが、予想以上に解読が困難なものが多く、3年で終えるには、かなりな作業量を必要とする見込みであることがわかった。このため、書籍資料の詳細な調査や各地の図書館や他機関に所蔵する百々家関係の医学書籍の調査や門人調査はほとんどすすまなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①研究代表者・分担者等による、書翰史料の解読を、ひきつづき精力的におこないたい。 ②雇用する調査補助員を複数にして、書籍史料の詳細目録化にも着手する。 ③今年度は2年目にあたるので、「書物出版と文化変容」として続けてきた旧科研研究会(代表一橋大学若尾政希、横田はその分担研究者であった)の拡大研究会を、「近世の医学書をめぐる諸問題」をテーマに、9月頃に京都大学において開催する。本科研が中心となって、医学書・医者などをテーマとして数本の報告を準備するとともに、できれば、百々家文書についての小展示会をおこなう予定。
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Causes of Carryover |
①目録作成などはほぼ順調であったが、書翰解読などに想定以上の時間を費やしたため、他機関などへの調査をおこなう余裕がなく、旅費などを使用できなかった。 ②7月のフランスのパリ第7大学・ストラスブール大学での招待講演は、先方から旅費などが支給された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
目録作成などの遅れを取り戻すため、調査補助員を2名に増加するなど強化する。
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