2018 Fiscal Year Annual Research Report
The medical environment and the development of medical research in early modern Kyoto
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16K03045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横田 冬彦 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (70166883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有坂 道子 京都橘大学, 文学部, 教授 (30303796)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近世医学書 / 医療環境 / 近世京都 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究代表者のこれまでの書物文化史研究を集成して、『日本近世書物文化史の研究』を岩波書店から刊行することができた。特に同書の第10章「医学的な知をめぐってー医療政策と地域社会ー」では、日本近世における地域社会の医療政策と国家の医療政策との関連を広く考察した。これは本研究の背景をあきらかにしたものである。 本研究が直接に素材としたのは、近世京都の禁裏御典医でもあった百々家の関連史料および京都大学に寄贈された蔵書資料であり、その目録作成を行っていたが、いずれも本年度で完成することができた。ただ、前者のうち19世紀前半を中心とした百々漢陰・鳩窓に宛てられた重要書簡史料100余通については、分担研究者とともに、なお解読作業を進めている途中であり、百々家と江戸の幕府典医多紀家や京都の諸医家、漢学関係者などとの興味深い関係が解明されつつある。また、1838-39年の「診療記録」からは、519人のべ772件の症例が確認でき、感染症の流行などのほかに、日常的な病気のありよう、人々の医療受容の実態をも明らかにすることができた。そうした医療環境・臨床実態をふまえて、百々家の医学研究や全国から門人が集まってくる実態などが解明できた。この京都の医療環境および同家の医学研究の意義については、その成果を別に発表する予定である。 後者の蔵書資料の調査・目録化を通じて、たんに蔵書構成や所蔵医学書の状況がわかっただけでなく、さまざまな読書ノートや講義ノートなどが発見され、臨床経験と医学書研究との関連が解明された。
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