2018 Fiscal Year Research-status Report
近世の啓蒙的和算書の書誌的研究とその例題の分析による商取引慣行の解明
Project/Area Number |
16K03061
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中川 すがね 愛知学院大学, 文学部, 教授 (80227743)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 和算 / 啓蒙的和算書 / 塵劫記 / 貨幣両替 / 両替算 / 商取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究3年目であり、昨年度の実施状況報告書で計画していたように、塵劫記等啓蒙的和算書の書誌的検索と研究を継続するとともに、和算書の出版動向について分析を進めた。その結果、18世紀には上方から江戸への出版の拡大や地方都市での出版により和算書の多様化や専門化がみられ、塵劫記の影響を脱していくことが確認された。 1 全国の大学・自治体図書館等に所蔵されている和算書の所在調査を図書目録やHPのデータベースで実施し、エクセルでデータベース化した。 2 1のデータベースの啓蒙的和算書の出版事情を明らかにするため、大阪本屋仲間と京都本屋仲間については板木目録や仲間記録などの江戸時代の出版関係の史料や文献を昨年度に引き続き調査・収集した。同時に江戸時代の書誌的研究の成果により不備を整えた。その結果を、1のリストに反映させ、昨年できなかった国文学研究資料館の国書総目録のデータベースとの対応関係も検討し、出版人である本屋株の移動や異本の系統化も検討した。 3 筑波大学図書館乙武文庫および東京都立中央図書館加賀文庫等の和算書の撮影を行い、例題の分析をすすめた。 以上をまとめて昨年度に引き続き啓蒙的和算書のデータベースを充実させた。今年度は東京都立中央図書館の加賀文庫等の撮影を完了させ、昨年度できなかった西日本の広島・福岡・岡山、日本海沿岸の金沢・富山などの図書館・博物館等における和算書調査を行い、データベースを充実させて、その全容を明らかにする計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度も遠隔地にいる家族の介護のため、図書館や大学などに所蔵されている啓蒙的和算書の調査を充分に行うことが困難であった。今年は研究実績の概要にも書いたように、西日本から日本海側沿岸各地の和算書の調査を進める必要がある。 ただ主要な史料諸機関のHPや図書目録などでの所在調査はほぼ完了したので、おおむね計画通り研究を進めることができていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は平成30年度に完了できなかった自治体史等の検索による啓蒙的和算書の所在調査や、西日本・日本海沿岸地域の金沢・富山・広島・福岡等の拠点的図書館・大学・文書館等の調査を実施して、啓蒙的和算書のデータベースを完成する。 また調査と併行して、写真撮影・複写などにより和算書例題の収集と年代順の整理を進行させ、論文を作成する。その上で最終年度の報告書の作成について計画を立てる。
|
Causes of Carryover |
遠隔地の家族の病気が重くなり、9月に死亡したため夏季休暇中に調査旅行ができず、旅費を使うことができなかった。今年度は昨年度調査する予定であった金沢・広島等で調査を行う予定である。
|