2016 Fiscal Year Research-status Report
近代の北海道と周辺地域における生物の人為的移入に関する研究
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16K03066
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
山田 伸一 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30291909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移入種 / 環境史 / キツネ / 樺太(サハリン) |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道立文書館所蔵の開拓使文書を調査し、生物移入の事例に関する史料を収集した。これと関連して、開拓使が北海道外からの移入を図る際に移入元として期待することが多かった東北地方のうち、青森県下北地方において、北海道との歴史的な関係について調査した。 1870~1920年代初期に函館・札幌・小樽などにおいて刊行された新聞を継続的に調査し、キツネその他の動物移入に関する記事の収集を進めた。また、1933年以降にネズミの駆除を目的としてイタチの移入が実施された利尻島の利尻富士町において、村役場文書の調査をおこなった。 これらの作業で得られた史料のうち、函館支庁が青森県からキジを持ち込んで移入を計画した事例、根室支庁がウナギとドジョウを函館支庁に依頼して取り寄せて移入を実施した事例、札幌本庁が函館支庁管内からアユを取り寄せようとした事例(失敗に終わる)について、事実関係を整理して研究ノートをまとめ、発表した。開拓使が計画・実施した生物移入は鳥類・ほ乳類・魚類など幅広くにわたっており、開拓使は自然界への生物移入に非常に積極的だったこと、それらの多くは試験段階のものとして位置づけられていたこと、生物移入の計画・実施に際しては、他の生物に対する影響についての考慮がほとんど払われていないこと、などの特徴点を指摘した。 また、本研究の派生的な成果として、青森県下北半島と北海道との歴史的な関係を調査した内容の一部を、下北半島風間浦村に所在する安政期奉納の絵馬についての論考をまとめる際に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開拓使文書の関連史料調査はおおむね予定通り進捗させ、初年度に予定した内容をまとめることができた。北海道内各地で刊行された新聞の調査は、当初予定よりやや遅れてはいるが、大きな問題はなく進捗させている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、開拓使文書の関係史料の調査を進める。その際、直接の生物移入に関わるもの以外に、それと連動すると思われるキツネなどの鳥獣利用についての史料を視野に入れることとする。 北海道内刊行の新聞調査を継続して進め、1910年代以降の北海道・千島列島・樺太における養狐事業の展開に関して事実関係を整理する。 収集した生物移入事例の整理を進めるとともに、比較研究の視点を導入するため、同時代の他府県における生物移入の事例について随時情報を収集する。
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Causes of Carryover |
北海道外での調査を複数回計画していたが、その実施前に済ませておくべき史料調査の進捗が年度後半にずれ込んだこと、職場の用務との日程調整をつけることができなかったこと、などのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった北海道外での調査を、年度内の早い時期に実施する。
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