2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03069
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒田 卓 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70195593)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アジア・アフリカ史 / 西アジア・イスラーム史 / イラン近現代史 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
イラン近現代の歴史は、大きく言ってナショナリズム、イスラーム、そして社会主義の3つの思想潮流とそれを具現化せんとする勢力の相克と交錯によって彩られてきた。本研究の目的は、各種形態を取るナショナリズム、及びこれまた種々のバージョンとして現前化してきたイスラーム主義の華々しい喧伝と覇権的な地位の陰で、ともすると双方の陣営からは等閑視され、また現在もされている社会主義潮流の源流に遡航を試みるものである。具体的には、イランで、恐らくアジアで初めて「社会主義ソヴィエト共和国」樹立を宣言した、いわゆる「ギーラーン共和国」の盛衰に焦点を定める。 ただし、平成28年度は研究代表者が所属部局の研究科長職を務めており、エフォート率を下げざるを得ない事情があったため、主として立憲革命以来の思想傾向と運動系譜を継承するクーチェク・ハーンを取り上げることとした。彼と彼がリーダーを担ったジャンギャリー運動に関して、ペルシア語及び欧米語の新出資料・書籍を購入したほか、今年度は、前回科研費課題のイラン系知識人の在り方とも関連させた研究を進めた。 研究実績としては、イタリア・フィレンツェ大学での国際シンポジウムでのクロージング・リマークスにおいてイラン系知識人=旅行者のパイオニア、アブー・ターレブ・ハーンに言及した原稿が書籍として出版され(執筆部分pp. 321-323)、さらに「イラン系ムスリム知識人たちの近代との出会い」と題する論稿を執筆し、その中で18世紀末から19世紀前半にかけての知識人の近代表象を取り上げた。これは平成29年度に出版できるよう折衝中である。また、イラン近代における知識人の在り方をテーマに、知識人の系譜論と立憲革命における知識人論に関する研究動向を主題にした研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度まで所属部局の研究科長職を務め、職責上十分な研究時間の確保が難しく、また研究史資料の調査や収集、研究交流のために、海外、とくに念頭に置いていたイランに調査出張を実施することができなかった。ただし、平成29年度以降は同職から退くため、予定していた計画を一部手直ししつつ、課題の進捗に注力できるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度にも引き続き、今年度に予定していたクーチェク・ハーンの思想や事績に関する基本資料の分析作業と、未公刊史料の解読を行う。また、海外調査出張も実施する予定である。
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Research Products
(4 results)