2017 Fiscal Year Research-status Report
近世中国の「科挙」と「官僚制」に関する史料と西洋知識人の情報源に関する研究
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16K03070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 晃嗣 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50396412)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世中国史 / 官僚制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成29年度)は、昨年度に前倒しでイタリア等のヨーロッパ調査を行ったこともあり、中国と日本において史料調査と発表を中心に行った。6月には、中世から近世にかけて日本の対外窓口として大きな役割を果たした対馬の実地調査、ならびに平戸藩に所蔵されている中国及び西洋関係の公文書とその目録『楽歳堂蔵書目録』を調査(於松浦史料博物館及び京都大学附属図書館)し、当時の日本における中国の官僚制度に対する認識方法と知識の偏りについて、具体的に知ることができた。対馬藩藩校維新舘の監学クラスの学識者がこの『楽歳堂蔵書目録』編纂に参与していたにも関わらず、極めて初歩的な明朝文書行政に関する誤解が見られることは、蔵書の有無は、記載される知識への接触が可能であったということを示すに止まり、知識として実際に修得していたかということとは全く異なるという、ある意味で当然のことを認識させられた。このことは、翻って西洋における宣教師経由の報告に基づく知識や輸入書籍による理解の水準を相対的かつ公平に判断する上で、一つの考察基盤とすることができる。また10月には浙江大学(中国)、12月には明治大学(日本)、3月には東北大学(日本)で研究発表を行った。特に、明治大学での発表においては、ライデン大学教授であり、西洋とアジアとの交流の歴史に関する世界的権威であるLeonard Blusse氏に臨席いただき、研究方法や今後の調査について助言を得ることができ、極めて有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的な計画を、昨年度と補完できる形で行え、また各地の所蔵機関においても十分な調査を行うことができた。また、今後の研究の上で協力を得られる先生方の助言を得られたこともあり、特段の問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、オランダライデン大学とイタリアベネチア大学に対しては、渡航と調査の調整が最終段階である。また、ドイツハイデルベルグ大学において調査をできる可能性があり、現在日程調整を含めて検討中である。それらの機会を有効に活かし、蔵書調査を綿密に行いたい。また、フランス漢学研究所が所蔵している清代の科挙答案に関しては、これを入手できたので、読了したい。
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Research Products
(3 results)