2017 Fiscal Year Research-status Report
19世紀ビルマ・デルタ地域における下級官吏と植民統治体制
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16K03074
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩城 高広 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90312925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英領ビルマ / ミャンマー / 植民地行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画は、(1)現地調査により、19世紀後半のビルマ・デルタ地域における下級官吏関係文書、下級官吏任用の制度的背景にかかわる文書を収集すること、(2)下級官吏の歴史的位置づけ、ならびに下級官吏と植民統治体制との関係性について考察することであった。 (1)については、2017年9月、ミャンマー国立公文書館における調査を実施した。その結果、1882年から1893年にかけて、吏員任用のためのルールが整備されており、ビルマ全域の植民地化(1886年)を経た1890年前後に、制度上の画期があるのではないかと思われた。また、19世紀末のビルマ・デルタ地域社会では、人口増加と農地開発にともない、行政機関での訴訟や土地登記が急増しており、このことも、吏員任用制度の整備につながっているのではないかと考えた。また、2018年2月、英国図書館(ブリティッシュ・ライブラリー)において、同館所蔵のインド省文書を対象に調査を実施した。しかし、下級官吏、その他の吏員制度的枠組みについて、全体像をまとまったかたちで説明する文書を見いだすことはできなかった。他方、吏員任用について定めた規則類、県知事が吏員任用や任用数を適切に管理しているかチェックするマニュアル類を閲覧して、制度的枠組みの一端を知ることができた。 (2)については、いまだ個別事例を分析、検討する段階にとどまっており、あらたな知見を得るにはいたっていない。ただし、県レベルの行政機関に勤務する吏員が作成した文書のなかには、上司にたいして、みずからの立場をつよく主張する、興味深い内容をもつものがある。こうした事例に着目して考察ができた。なお、すでにとりまとめ済みの論文については、発表の機会を待っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画上、本年度にとりくむべき作業が、予定していたほどには進捗せず、具体的成果を得るにいたらなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、文書の分析、検討とともに、研究集会での報告、学術論文のとりまとめを作業の中心にすえる。史料調査にかんしては、ミャンマー国立公文書館でのフォローアップ調査を実施する。これらをつうじて、下級官吏と植民統治体制との関係性について、新たな知見を得られるようつとめる。
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Causes of Carryover |
現地調査の期間が、当初の予定よりも短くなったことがおもな理由である。使用計画としては、現地調査費用(期間について再検討する)、本年度購入予定だった資料、文献の購入にあてる。
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