2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 謙一郎 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20294358)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西南夷 / 中国南方民族ネットワーク / 大理国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き中国における資料収集を行い,並行して本研究で主に使用する文献史料の整理・校訂をおこなった。 まず5月に中国雲南省に出張した際,安寧県において,同地方に現存する唯一の唐前期(武周期)の碑文である王仁求碑について,碑文本体およびその背後の墓葬の現況について調査をおこなった。また,8月に再度雲南省を訪問した際に江川県の李家山遺跡を訪問し,その地理的位置や地形の実見を通じて,昨年発表した漢代雲南の南方交通・交易ルートとの関連に関する問題について重要な示唆を得た。 9月には四川省南部を訪問して,雲南と中国内地を結ぶ今一つのルートについて,同地で開催される国際学会において口頭発表を行う予定であったが,本務校における用務のため断念せざるを得なかった。 10月以降は文献史料の整理・校訂に力を注いだ。大理国時代に関する基本史料である『南詔野史』の明代鈔本(淡生堂本),清代の2種の版本(王本・胡本)について,全文を電子テキスト化するとともに,入手可能な複数の伝抄本・版本にもとづいて校訂を施した。また,本書に先立って編纂された『南詔源流紀要』・『テン載記』(テンはさんずいに「真」)について同様の作業を行った。『テン載記』は多くの叢書に収録されており校訂に大きな困難はなかったが,『南詔源流紀要』は伝本が少なく,『雲南史料叢刊』に収録された北京大学図書館本の雲南省図書館伝抄本に基づくテクストがほとんど唯一のものであった。今回新たに別系統の伝抄本によって交合を行い,テクストの信頼性を高めることができた。 なお,昨年度雲南大学においておこった研究発表の内容を整理・発展させたものを今年度の名古屋大学東洋史研究会の大会において発表した。この内容については同研究会の機関誌に論考として発表することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で行うことにしていた広西チワン族自治区における交通ルートの実地調査・現地研究機関における情報収集が第2年度も大学における職務・国際学会の開催地・時期などの問題から遂行できなかった(これは第3年度に実現すべく連絡と準備を勧めている)。
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Strategy for Future Research Activity |
主要な史料の収集およびデータ化については一応の目途がついたため,今後はこれらの分析と研究成果の執筆・発表に力を注ぐ。また上記のように実現していない広西地方の実地調査行い,それにもとづいて分析結果を修正する必要も発生すると考えられる。今年度作成した校訂テキストに関しては現在,国内あるいは中国において発表することを検討中であるが,史料本文に関しては研究代表者が運営するWEBサイトにおいて広く公開する準備を並行して進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 図書資料購入のために確保していた額の一部であるが,購入予定の図書(中国で出版)が年度内に書店に入荷しなかったため,未購入となった。 (使用計画) 当該資料は今年度中に出版される予定であり,今年度に他の図書と合わせて購入する。
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Remarks |
本研究との関連で作成した『雲南機務抄黄』『南夷書』などの電子テキストを掲載している。
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Research Products
(2 results)