2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03089
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
杉村 伸二 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90411496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 郡国制 / 地政学 / 歴史地図 / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、平成27年度に所属機関の競争的資金を獲得して作成していた前漢の郡・県、王国・侯国の位置をポイントした歴史地図をもとに、それらの所属情報の時間的な変化をデータベースとして付加していった。 具体的な作業としては、郡県・王国の編成の大きく変化する前漢前半期に焦点を当て、まずはExcelで一覧表を作成し、そのデータを歴史地図を作成しているGISソフトArcGISに流し込んでいった。GISソフト上では郡と王国それぞれに所属する県を色分けして表示することが出来るため、時間による漢直轄郡と王国領との変遷が視覚的に認知できるようになった。 同時に歴史地図を、標高や河川情報などを付加した歴史地形図にするための標高データや河川が記された地図を収集した。これらのデータを歴史地図に取り込む作業を行ったが、定本としている『中国歴史地図集』に用いられている地図の投影方法が確定できず、本年度中には、地形データを取り込むことは出来ず、図を取り込む際の座標の補正作業を継続して試みている。 また平成27年度から取り組んでいる歴史地図作成のプロセスと今後の活用へ向けた展望について雑誌論文にまとめ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた郡・県・王国・侯国の所属情報のデータ入力についてはおおむね予定通りに進んでいる。ただし、県単位での帰属変化を反映させようとすると細かな考証が必要となり作業がスムーズに進まないことから、まずは郡単位での大まかな変化を追っていくことにしており、ある程度まで作業がすすんだ段階で、県単位の変化を反映させる予定にしている。 地形データの取り込みについては、上述のとおり、投影方法の違う地図を一つの地図に落とし込む際に必要な幾何補正という作業が、思いのほか難しく、当初予定していたほどにはすすんでいない。しかし何度かの手探りでの試みでこの先の作業手順の道筋は見えてきたので、次年度の早い段階で、標高データおよび主要河川の情報を歴史地図の中に反映させることが出来るもの考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは昨年度に引き続き二つの作業を行う予定である。 一つ目は28年度に出来なかった地形データの取り込み作業である。地形データのうち、標高についてはすでに中国の標高データを入手済みであるので、これをGISソフト上に反映させる作業を行う。また河川データについては、主要河川を記した漢代中国全体の地図を幾何補正して取り込む作業を行う。28年度はこの作業に手間取ったが、上述のとおり道筋は見えたので、早い段階で作業を終えたい。 もう一つは、郡県所属データの入力を継続して行う。現段階で武帝期以前の所属データの入力を終えているので、武帝期以降のデータ入力を継続して行う予定である。この作業は学生による入力補助を予定している。 これらの作業をふまえたうえで、郡県情報の変化を地形と合わせて検討することで、漢初の郡国制における郡と王国、侯国について地政学的な考察を行う。その方法論については東方に位置する都市(現段階では定陶を念頭においているが、複数を都市を考察することも考えている)に焦点を当てて、その都市の地形的な特徴と所属の変遷とを追い、関中に政権を置く秦漢王朝にとって、その都市の地政学的な意義を考察する予定である。 GISソフトで作成した歴史地形図については、インターネット上での公開を予定している。29年度はその可能性や方法も含めた検討を業者に依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
学内で行ったコピー、および研究成果として投稿した紀要の印刷費用が、学内経費のみで計上される仕組みになっており、当初予定していた印刷費は支出されなかった。 データ入力の謝金は、入力補助にあたった学生のスケジュールの都合から当初予定よりも少ない日数でしか従事できなかったため、謝金の支出も予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ここ数年、公表される簡牘史料およびそれらにもとづく研究書の発行が増加しており、その中には交通や地理関係のものも多い。それら図書の購入に使用したい。
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