• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2017 Fiscal Year Research-status Report

成立期のドイツ緑の党における価値保守主義的潮流 日独比較市民社会史的視点から

Research Project

Project/Area Number 16K03105
Research InstitutionIbaraki University

Principal Investigator

中田 潤  茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (40332548)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords価値保守主義 / 新しい社会運動 / エコロジー / 緑の党 / ナチズム / 市民社会 / ドイツ / 協同主義
Outline of Annual Research Achievements

本年度は,本務校において在外研究を取得したことにより,研究の中心をドイツ連邦共和国ヘルムート・シュミット大学に置いて,集中的に研究に従事した.こうした研究環境を効率的に利用するために,本年度は主としてベルリンにあるハインリヒ・ベル財団文書館,ハンブルク社会問題研究所,ニーダーザクセン州立中央文書館,ゴアレーベン文書館などで集中的に史料を閲覧を行った.
その結果以下のような研究上の知見を得た.1)原子力関連施設の立地反対運動を目的とする市民運動団体が,1970年代後半より次々と設立されるが,その中心的な人物の多くは,価値保守主義を思想的な背景としていた.2)彼らの一部は,市民運動という活動形態に対して限界を感じ,環境問題に特化した政党という形態での活動の展開を目指すが,それは市民運動の側からの全面的な共感を得たわけではなかった.3)こうして1970年代末に市民運動から派生してきた環境政党は,それ以前から存在していた環境政党と,とりわけ地域レベルにおいて激しい対立を引き起こすが,最終的その多くが合流する形で緑の党を創設する.4)こうして緑の党に合流した勢力には,主として都市部において住宅問題,女性の人権,同性愛者の人権等の領域で活動していた市民運動も含まれ,彼らは思想的には新左翼系の影響を受けていることが多かった.5)反原発デモ,軍備増強反対デモなどを通して両勢力の交流が図られ,相互理解が深化していったが,こうした展開が,緑の党という一つの政党に結集する際に大きな役割を果たした.6)1980年の政党結成後,双方の思想的な潮流は,組織的・権力政治的観点からの力学の影響を受けながら「原理派」「現実派」と呼ばれる党内潮流を形成し,1980年代末にその対立は頂点に達する.
こうした研究実績の論文等としての研究成果については,後述の通りである.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

研究計画全体として見るならば,在外研究という研究環境を利用することができたため,昨年度遅れ気味であった進捗状況を回復することができた.
本研究では,1970年代中頃から1980年代末までを視野に入れ,1980年代初頭までの時期を社会運動から政党への転換期,1983年から80年代末までの時期を党の体制内化の過程の時期と理解している.現時点においては,その全期間にわたる党中央レベルの史資料の収集には一応の目処がついている.その上で本年度は党の体制内化の過程の時期,とりわけ1980年代末の党中央レベルについて,党内の原理派,現実派,出発派,左派フォーラムという党内潮流の対立関係を軸に党内の動向を分析した.結論として体制化のプロセスの中で最左派勢力の影響力の喪失と左派勢力の既存の政治勢力との関係および自らの政治理念の実現の戦術の転換が,党の方向性に大きな影響を与えた点を明らかにした.その成果として,当該の時期に関する学術論文を3本執筆・刊行した(うち1本は現在投稿中).

Strategy for Future Research Activity

本研究課題を進めていくなかで,緑の党はとりわけ対象となる時期について言えば,極めて党中央の統制力が弱く,その結果として党地方組織の独自性が想像以上に強い組織であることが明らかになった.そのため,今後党の地方組織の分析に重点を置いて分析を進めていく予定である.具体的には,ニーダーザクセン州最も大きな力点を置きながら,シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州・ハンブルク州そして時間的な余裕がある場合バーデン・ヴュルテムベルク州を扱っていく予定である.
1970年代後半以降,ニーダーザクセン州において原子力関連施設を建設する計画が複数にわたって立案され,結果としてこの地域は,反原発運動が最も激しく展開された地域の一つとなった.市民運動団体の会合の議事録ないしGLU/USPの設立に向けた活動の資料といった,この地域での市民運動から政党設立を再構成を可能にする史資料はすでに大部分収集済みであり,本年度の合計で4週間程度のドイツでの史料調査によって史料を補完し,ニーダーザクセン州における市民運動と緑の党の成立に関する論文の執筆を行う予定である.
またシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州およびハンブルク州は,ニーダーザクセン州に隣接する連邦州であり,その地理的な関係から市民運動間の情報共有が極めて盛んであった.他方,社会構造・産業構造という観点から見ると,それぞれの連邦州の性格は極めて異なっており,その結果としてそれぞれの市民運動の性格にも大きな違いが見られた.またそれはそこから派生してきた緑の党の州支部の性格にも大きな相違をもたらすことになった.そこで今後,シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州およびハンブルク州を中心として史料の収集・分析を行っていく予定である.

  • Research Products

    (6 results)

All 2018 2017

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 3 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] ドイツ緑の党の党内再編 原理派の影響力喪失とベルリンの壁崩壊の影響を中心に2018

    • Author(s)
      中田 潤
    • Journal Title

      茨城大学人文社会科学部紀要. 社会科学論集

      Volume: 3 Pages: 印刷中

    • Open Access
  • [Journal Article] ドイツ緑の党の党内再編 : 左派フォーラムと出発派の動 きを中心に2018

    • Author(s)
      中田 潤
    • Journal Title

      茨城大学人文社会科学部紀要. 社会科学論集

      Volume: 2 Pages: 23-44

    • Open Access
  • [Journal Article] シュタットラード・ハンブルク(StadtRAD Hamburg) ドイツにおけるモバイル・シェアリング2017

    • Author(s)
      中田 潤
    • Journal Title

      茨城大学人文社会科学部紀要. 社会科学論集

      Volume: 1 Pages: 57-72

    • Open Access
  • [Book] 「ドイツにおける協同性について その歴史と現在 ヴォバーン地区を題材に」『まちづくりと市民協同性』2018

    • Author(s)
      中田 潤
    • Total Pages
      18
    • Publisher
      茨城大学人文社会科学部市民共創教育研究センター研究報告書
  • [Book] KZ-Gedenkstaette Neuengamme2018

    • Author(s)
      Jun Nakata
    • Total Pages
      10
    • Publisher
      KZ-Gedenkstaette Neuengamme
  • [Book] Korporatismus und Liberalismus in Kriegs- und Nachkriegszeit. Ordnungskonzepte in Japan zwischen den 1930er und 1950er Jahren“, in: Jonas, Michael u. a. (Hrsg.), Dynamiken der Gewalt. Krieg im Spannungsfeld von Politik, Ideologie und Gesellschaft2017

    • Author(s)
      Jun Nakata
    • Total Pages
      10
    • Publisher
      Verlag Ferdinand Schoeningh GmbH
    • ISBN
      978-3506779397

URL: 

Published: 2018-12-17  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi