2017 Fiscal Year Research-status Report
クルトゥラの挑戦――20世紀後半の在外ポーランド・メディアの歴史的意義
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16K03111
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポーランド / メディア史 / 東中欧史 / 連帯 / 文学研究所 / 『クルトゥラ』 / ギェドロイツ / リトアニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度のパリ近郊の文学研究所における研究状況の確認と資料調査の結果をふまえて、以下の3つの課題を中心に、研究を進めた。 1)雑誌『クルトゥラ』にかかわった執筆者のうち、これまでフォローできていなかった著述家数名(イェジ・ステムポフスキ、アンジェイ・ボブコフスキ、ジスワフ・ナイデルら)について情報と資料を収集すること。 2)文学研究所の創設者であり『クルトゥラ』の編集者でもあったイェジ・ギェドロイツの独特な地政学的認識の構造についての理解を深めるために、彼の出身地域である旧リトアニア大公国領の中世から20世紀にいたる歴史のとらえ方について、史学史的に再検討すること。 3)昨年度の調査でその存在を知ったヤヌシュ・モンドリィとギェドロイツの往復書簡の読解を進めると同時に、日本の状況にかんするモンドリィの情報源について調査を進めること。 1)については、これらの著述家の著作集と書簡集を入手し、2次文献についても収集を進めている。今後、彼らの経歴のなかで『クルトゥラ』とのかかわりがもつ意味について検討をおこなう予定である。2)については、関連するテーマについて東欧史研究会2017年度大会で発表した内容をまとめた論文が『東欧史研究』に掲載されたほか、10月にクラクフのヤギェウォ図書館で文献を調査し、また、同時期にヤギェウォ大学で開催された国際会議(第3回在外ポーランド史研究者会議)で関連するテーマについて発表をおこなった。3)については、モンドリィの情報源の1つとして、1981年に東京で発足した「ポーランド資料センター」の存在があることを確認し、ギェドロイツ宛書簡の内容と「資料センター」の刊行物との照合を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題となっていた資料状況と研究状況の確認については、これまで見落としていた『クルトゥラ』の関係者について情報を収集することができた点で一定の進展があったが、ポーランド本国側の研究が予想を越える範囲と速度で進んでおり、2017~2018年中に新たに刊行された史料集と2次文献が相当の点数にのぼっている。このため、研究状況の十分な検討を年度内に終えることができなかった。研究動向の整理とサーヴェイの執筆を次年度の優先的な課題としたい。 ヤヌシュ・モンドリィとギェドロイツの往復書簡の存在は、本研究の申請時には予期していなかったため、ほぼ白紙の状態からの調査となり、1つ1つの書簡を読み解くのに時間を要しているが、今年度の調査によって「ポーランド資料センター」とのつながりが判明したことから、今後の研究の方向について1つの手がかりが得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
文学研究所と『クルトゥラ』にかんするポーランド内外の研究動向を整理し、サーヴェイを執筆することを優先的な課題とする。 1950年代~60年代の『クルトゥラ』の記事の分析を進める。そのさい、とくに、スターリン体制の評価、1956年の政治的変化とのかかわり方、1968年の一連の出来事への対応に注目して分析を進める予定である。 ヤヌシュ・モンドリィの書簡については、「ポーランド資料センター」の刊行物『ポーランド月報』を並行史料として参照しながら、読解を進めたい。最終的には、書簡のポーランド語原文のテキストを確定したうえで、日本語に翻訳し、注解を付して公開することを目標とする。
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Research Products
(3 results)