2017 Fiscal Year Research-status Report
植民地時代メキシコの支払手段と商品流通の多元的理解:商業帳簿からの検討
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16K03124
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伏見 岳志 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (70376581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 正 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 講師 (60715035)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メキシコ / 会計史 / 史料学 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、昨年度に収集した帳簿史料の解読を進め、それぞれ帳簿に見いだされる記述方法のバリエーションをリスト化する作業をおこなった。この作業が目的とするのは、多くの帳簿に共通する特徴と、各帳簿の固有の特徴との区別である。例えば、略号や価格、数量などの表記方法には、概ね共通する部分と、独自ルールの部分がある。このうち、共通部分をリスト化することで、複数の帳簿に適応できるデータベース作成が可能になる。その結果、商品の単位や重量などの表記方法については、一定の共通ルールがあることが認められた。しかし、略号については、かなりバリエーションが多く、簡単で統一的な入力規則の設定は、現段階では難しく、個別判断が必要なこともわかった。 また、昨年度からの課題である記入秩序の解明については、スペイン本国側の帳簿に関する研究を参照し、原則についての理解は深まった。しかし、この原則から逸脱する部分について、書簡類の分析を試みたが、十分な理屈を解明するには至っていない。 いっぽう研究分担者は、やはり前年度に収集した帳簿やその他の会計史料のうち、フォーマットが近似するものに絞って、それらを解読し、データ化する作業を昨年度に引き続き進めた。こちらは、狭い範囲に適用可能な共通ルールで、データベースを作成した場合に、どの程度のことを分析できるのか、あるいはどのようなデータが漏れるのか、といった点を確認することを目的とした。その結果、価格情報などの集計には一定の効果があるが、商品情報は商品の品質が多様であるため集計しにくいことがわかった。また、取引相手の記述にばらつきがあるため、同一人物が別人としてカウントされるケースが多かった。したがって、人物情報の規格化がひとつの課題であることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は史料のバラツキが多いため、その対処法の確立で研究が遅れた。本年度は、バラツキの比較的少ないものに絞って、データベース化を進め、解析可能な部分と、そうでない部分とをある程度特定することができた。したがって、データベースの有効性については、ある程度の評価を与えることができた。しかも、その解析によって、カカオやコチニールなどのいくつかの商品の流通過程や数量については、分析が進んだ。したがって、流通や貨幣についての理解は深まったと言える。 しかし、できあがったデータベースは、汎用性がないものである。バラツキがあるデータをより広範に扱う際に必要となる、帳簿作成原理の把握は、まだ途上である。また、予定していた商業書簡の分析も進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.数量化の継続。現在までに構築済みのデータベースでの入力作業を継続し、より多くの会計情報を集計する。 2.商業書簡の分析の深化。商品情報の記述を分厚いものにするために、書簡類の分析を進める。これによって、データベースに登場する商品の品質や製造過程などの理解を深め、同じ名前の商品が、どのようなに品質面で差異化されているのか、を解明する。 3.上記の情報を利用しながら、商品流通の解析。品質の異なる商品ごとに、流通経路や量に違いがあるかどうかを検討する。また、使われる貨幣やその他の支払い手段についても、経路や量に違いがあるかどうかを検討し、地域内で、あるいは地域外との商品のやりとりを、より細やかな差異をあきらかにしながら、理解を深めたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者が実施を予定していたスペインでの史料調査が、準備に手間取り、出張およびその手続きが遅くなったため、本年度の助成金からの支出として計上していた外国旅費の支出ができなかった。このスペインでの史料調査は、次年度使用額から出費する予定である。それ以外は、従来の計画通りの支出を予定している。
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Research Products
(2 results)