2016 Fiscal Year Research-status Report
パリ民事籍簿復元事業の実証的研究―近代国家の政治社会史
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16K03126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長井 伸仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10322190)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フランス / 歴史 / 近代 / 戸籍 / 個人情報 / 国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、(1)関連研究の調査、(2)フランスでの史料調査、の二つを実施した。関連研究については、日本史・東洋史や社会学などを中心に調査を進めた。またフランスでの史料調査は、8月末から9月上旬と、3月中旬の二度にわたりおこなった。申請時に想定していなかった夏期の調査を実施したのは、関連研究が予想より少なかったことのほか、刊行史料の分析を先に終えてから主要史料であるパリ市文書館の「V9E系列」の分析に取りかかるという狙いからである。その結果、主要な刊行史料(パリ市議会の議事録・報告書、国会の議事録・報告書)はほぼ収集できた。加えて、パリ警視庁文書館(DA1,DA23)と国立公文書館(BB30/1607-1609)において復元事業関連の史料を見いだすことができ、それらも一通り撮影した。今後は、平成29年度の夏の調査までにそれら史料を分析することで、主要史料の閲覧に備える所存である。 ここまでの分析で言えることは、民事籍簿の復元をめぐっては技術的・財政的な議論が相当の部分を占めており、制度の必要性についての議論は目立たなかったということである。当時の主要紙の一つであるLe Temps紙をみるかぎり、事業への言及は少ない。また、議会内での議論についても、法制定時の1873年前後に集中的におこなわれており、事業開始後はその是非を根本から問うような議論は沈静化している。その理由や意味は現時点では不明であるが、事業の意義が広く理解されていなかった可能性もある。一方、平成28年度の調査では、市民の間での事業の認識にまでは迫ることができなかった。この点については、29年度以降の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連研究が予想より少なかったものの、その分の時間をフランスでの史料調査に充てることができ、全体として順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について、現時点では申請書記載の工程に沿っておこなう考えである。
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