2017 Fiscal Year Research-status Report
パリ民事籍簿復元事業の実証的研究―近代国家の政治社会史
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16K03126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長井 伸仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10322190)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フランス / 歴史 / 近代 / 戸籍 / 個人情報 / 国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に引き続き、(1)行政による個人同定・管理をめぐる研究の調査、(2)パリ民事籍簿復元事業に関する史料の分析、の二つを実施した。(1)について、近年、人口移動の著しい活発化と、共同体への帰属意識の流動化・複雑化を背景に、国家による個人の同定と管理については社会的な関心が高まっており、学術研究もさかんになっている。本研究に関しても、西洋史のほか日本史・政治学・歴史社会学などにも視野を広げて文献を入手できた。それらの分析は途上であるが、現時点では、本研究が当初に定めた視角や方法を変更する必要はないと考えている。(2)について、平成29度中に二度にわたる資料調査を実施し、本研究の主要史料であるパリ文書館V9E系列の文書を閲覧する予定であったが、事情により、これを実施できなかった。 現時点で得られている知見は、質的には、昨年度と基本的に大きく変わっていない。すなわち、民事籍簿復元事業をめぐる議論の多くの部分は、技術的・財政的な問題に関わっており、民事籍簿という制度の是非やあり方についての根本的な議論は目立つものではなかった。他方、パリの住民の反応については、手稿史料の分析がまだ進められていないものの、ここまでに閲覧した新聞などをみる限り、広範な議論が起こった形跡はない。今後は、主要紙のほか、区単位でのコミュニティ紙的な刊行物、さらにはカトリック教会の教区週報などにも調査の範囲を広げて、情報の収集に努める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究や関連研究は一通り入手し、一次史料についても、パリ文書館所蔵のものを除き撮影を済ませているが、上記「研究実績の概要」で述べたように、復元事業の担当部局の文書の閲覧に着手するには至っていない。また、ここまで撮影した史料の分析も途上である。
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Strategy for Future Research Activity |
下に記載した史料調査時期の変更を除き、申請書記載の通りにおこなう考えである。
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Causes of Carryover |
(理由)おもに史料調査を実施できなかったことによる。 (使用計画)実施すべきであった調査は、平成30年夏と31年春におこなう予定である。
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