2018 Fiscal Year Research-status Report
パリ民事籍簿復元事業の実証的研究―近代国家の政治社会史
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16K03126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長井 伸仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10322190)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フランス / 歴史 / 近代 / 個人情報 / 戸籍 / 国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、おもに復元事業局の文書の調査と閲覧をおこなった。同局は、パリ市に設置され、1872年から97年まで25年かけて、焼失した民事籍簿の約3分の1、記録件数にして269万件(出生142万件、婚姻35万件、死亡92万件)の復元を実現した。同局の文書は、パリ文書館にV9E系列として保存され、台帳7冊と史料箱119個からなる。そこには、局や関連委員会における議論と決定、省庁・議会・民間団体などとの書簡、住民から提出された文書の審査記録などが含まれている。本年度は、8月下旬から3週間かけて、これらをほぼすべて閲覧し、必要部分の撮影をおこなった。これをもって、本研究に用いる刊行史料と文書史料のうち、当初閲覧する予定であったものについては、すべて確認したことになる。 現在は復元事業局文書の読解、分析の途上であり、全体的な結論を出すには至っていない。ただ、現時点で得られている知見は、基本的には昨年度と同様である。すなわち、復元事業をめぐる議論の多くは、技術的・財政的な問題に関わるものであり、制度の是非やあり方についての根本的な議論は少なかった。その一方で、パリの住民の反応については、復元事業に関しても民事籍簿制度そのものに関しても、広範な議論が起こった形跡は見つかっていない。 本年度は、上記文書の分析を終え、これまで収集した他史料と照合せねばならないが、復元事業をめぐる議論や世論のあり方が上記のようであったとすれば、そのことの意味について、さまざまな角度から検討することが必要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
復元事業局の文書は、劣化のため閲覧できなかった数点を除き、すべてを調査することができた。ただし、住民の意見を反映するような内容が少なかったため、この点を補う調査が必要になる。それ以外は、全体として順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の予定通りおこなう。
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Causes of Carryover |
(理由)平成30年夏と31年春の二度にわたりおこなう予定であった調査を、30年夏の一度で終えることができたため。 (使用計画)補足的な調査および史料収集を、31(令和1)年夏に実施する。
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