2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03128
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
三佐川 亮宏 東海大学, 文学部, 教授 (20239213)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 紀元千年 / オットー3世 / 皇帝権 / ローマ帝国 / 終末論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヨーロッパ中世社会における「政治」と「宗教」の関係、そして今日の欧州連合(EU)の歴史的起源を解明すべく、「紀元千年の皇帝権とキリスト教終末論」を研究テーマとして設定する。具体的には、(1)皇帝オットー3世(980-1002年)の「ローマ帝国の改新」政策によるヨーロッパ=カトリック世界の再編・拡大の試み、(2)紀元千年前後の時期における終末論の高揚、という2つの問題について、双方の相互影響関係の解明を研究対象とする。そして、(1)(2)の研究を通じて、「キリスト教ヨーロッパ」の歴史的基礎としての中世ローマ帝国の歴史的境位を総合的に確定する。 2年目は、上記の課題に関して、①史料・文献の調査・収集・分析を継続する一方、②紀元千年前後の時期における終末論の高揚、及びそれと皇帝オットー3世の「ローマ帝国の改新」政策の関連性を中心に研究展開した。 ①については、主たる研究対象であるドイツに関する各種の刊行史料、研究書、雑誌論文等を、新刊・古書の購入、あるいは資料調査のための出張を通じて入手し、体系的・網羅的に収集することができた。 ②については、史料と並んで近年刊行された膨大な量の研究文献を渉猟した結果、紀元千年前後における終末論の高揚を確認する一方、「最後の審判」に起因する「紀元千年の恐怖」の実在性については、これを否定する結論に到達した。ただし、「ローマ帝国の改新」が「最後の審判」を強く意識した政策であったことについては、肯定的評価を与えることができる。以上の成果をまとめた『紀元千年の皇帝-オットー三世とその時代』は、2018年5/6月に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は、①史料・文献の調査・収集・分析を継続する一方、②紀元千年前後の時期における終末論の高揚、及びそれと皇帝オットー3世の「ローマ帝国の改新」政策の関連性を中心に研究展開したが、いずれも当初の計画通りの進展を得ることができた。特に②については、3年間の研究計画終了後の刊行を予定していた『紀元千年の皇帝-オットー三世とその時代』の刊行が、3年目のスタートする2018年5/6月の時点で実現することとなった。 この他、本研究と密接に関連する書評が刊行された(参照、研究業績)。また、ドイツ、レーゲンスブルク大学のH・H・コルテューム教授と共同で、本研究と密接に関連する史学史のテーマについての共同研究を進め、Hans-Henning Kortuem, "Gut durch die Zeiten gekommen" Otto Brunner und der Nationalsozialismus, in: Vierteljahrshefte fuer Zeitgeschichte, 66-1, 2018, S.117-160として研究協力の成果が一つの結実を見た。三佐川の貢献は、S.143 Anm.120で言及されている。 最後に、本研究に先行し、その前提となった『ドイツ史の始まり―中世ローマ帝国とドイツ人のエトノス生成』(創文社 2013年)が、2018度第108回日本本学士院賞を授与されることが決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記文献調査と並行して、3年目は、(1)皇帝オットー3世(980-1002年)の「ローマ帝国の改新」政策によるヨーロッパ=カトリック世界の再編・拡大の試み、(2)紀元千年前後の時期における終末論の高揚、という2つの問題についての最重要史料である、メールゼブルク司教ティートマルの『年代記』の翻訳に着手する予定である。順調に進んだ場合、2020年度に翻訳・出版する可能性を視野に入れている。また、研究協力したコルテューム教授の論文についても、研究雑誌上での翻訳出版を検討している。
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Causes of Carryover |
(理由) 勤務校において申請時に予定していなかった研究補助金が30万円支給されたため、残金が生じました。 (使用計画) 次年度予算に加えて適正に使用いたします。
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Research Products
(2 results)