2016 Fiscal Year Research-status Report
デンマーク領西インド諸島における自由黒人の果たした歴史的役割について
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16K03129
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐保 吉一 東海大学, 文学部, 教授 (00265109)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自由黒人 / デンマーク領西インド / ピーター・フォン・ショルテン / 奴隷法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最大の目的は2017年がデンマーク領離脱100周年というモメンタムを捉え、旧デンマーク領西インド諸島(現アメリカ領ヴァージン諸島)の歴史をこれまで看過されてきた自由黒人、特にフリーカラードを中心に据えて新たに捉え直すことである。具体的にはこれまで奴隷制に関して研究の空白地帯であったカリブ海デンマーク植民地を取り上げ、従来研究が手薄であった自由黒人、特に白人との混血であるフリーカラードの規模や役割を実証的に調査し、彼らが果たした歴史的役割を奴隷解放以前と解放後に分けて明らかにする。2017年度に行われる様々な行事を契機に、旧植民地(現アメリカ領ヴァージン諸島)及び旧宗主国(デンマーク)の側から自由黒人(フリーカラード)という特異な存在を捉え直し、彼らを中心に歴史を再構築することを目指している。 本研究は全体で4年間の実証的研究である。最大の特徴は、研究課題に関わる未刊行基本史料が米領ヴァージン諸島、デンマーク、アメリカの3カ所に分かれて存在するため、それらの場所を順次実際に訪問して史料を確認し、入手することである。さらに近年急速に発展してきた遺伝系図学やDNA分析の成果が生かされているオンライン情報(例えばAncestry.com)も批判的に利用して、個の部分からも自由黒人の実態を調査することも大きな特徴である。 初年度は関連文献目録作成、関連年表作成、文献入手等、今後の研究のための基礎作業を中心に行なった。2016年8月に行なったデンマークでの資料調査では、1878年に発生した反乱Fireburnの主人公3人がデンマークに移送された史料を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は交付金の受領時期が夏頃になることが分かっていたため、それに合わせてスケジュールを組んだ。さらに今後の研究展開を踏まえて初年度は関連文献目録作成、関連年表作成、文献入手等の基礎作業を中心に行なった。なお、2016年8月に実施したデンマークでの史資料調査では、史料を注文してから実際に手に取るまで数日かかったのは少々予定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度における研究の中心は、旧デンマーク領西インド諸島(現アメリカ領ヴァージン諸島USVI)における現地調査を実施することと、奴隷解放(1848年)以前の自由黒人の状況をセンサスや法律面から考察することである。USVIでは、各島の主要な博物館、記念碑、関係遺跡を訪問し、自由黒人に関する説明記述を調査するとともに、郷土史家のGeorge Tyson氏, 郷土史家でUSVI議会議員であるMyron Jackson氏と最新の研究状況や近年急速に発展してきた遺伝系図学やDNA分析等について意見交換を行う予定である。また、黒人奴隷に理解があり解放にも直接的に関わった総督 Peter von Scholtenが、1827-1848年に公布した黒人奴隷及び自由黒人に関する法を精査・整理し、全体として如何なる意図を持っていたのかを考察する。また、デンマーク国内における奴隷解放論議(特に1830年代のデンマークの地方身分制議会における議論)にも注目して、自由黒人に関する事項を整理したい。 平成30年度以降における研究の中心は米国国立公文書館(NARA)における文献調査と奴隷制廃止(1848年)後の社会における自由黒人の置かれた状況の考察である。 出来れば平成29年度後半または平成30年度前半に、それまでの研究成果をまとめて論文を投稿したい。
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Causes of Carryover |
発注をしていた洋書の刊行が遅れ、注文が取り消しとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
刊行が遅れていた洋書は今年度中には刊行される見通しのため、残額を用いてそれを発注する予定である。
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Research Products
(1 results)