2018 Fiscal Year Research-status Report
デンマーク領西インド諸島における自由黒人の果たした歴史的役割について
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16K03129
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐保 吉一 東海大学, 文化社会学部, 教授 (00265109)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フリーカラード / 自由黒人 / セント・クロイ島 / デンマーク領西インド / 奴隷法 / カリブ海 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、全体として「デンマーク領西インド諸島(現アメリカ領ヴァージン諸島)において自由黒人が歴史的にいかなる役割を果たしてきたのかを考究することである。その中で本研究3年目に当たる平成30年度における研究の中心は、アメリカ合衆国ワシントンD.C.での文献調査と奴隷制廃止(1848年)後の社会における自由黒人の置かれた状況の考察であった。 まず、8月の一斉休暇中約1週間の日程で、ワシントンD.C.及びメリーランド州にある米国国立公文書館(NARA)において文献調査を実施した。ここにはRecord Group 55という旧デンマーク領西インドの史料が整理された形で存在しており、今回は特に植民地政府布告や新聞(St.Thomas Tidende, St. Croix Avis)から当時の自由黒人に関する部分を重点的に調査し、必要部分を複写さらには、新聞全体をデジタルカメラで撮影した。帰国後これらの整理・プリントアウトを実施した。 次にこれまでの研究では空白部分であった奴隷解放後(1848-1917年)の自由黒人の状況を、現地新聞(St. Croix Avis他)や訪問者の手記を中心に考察しているが、残念ながら現時点では、特に解放直後に関して、元自由黒人と元黒人奴隷の一般的境遇の差については明らかにはなっていない。 なお、当該年度の研究成果の一部は以下の通りである。「旧デンマーク領西インド諸島におけるフリーカラード Free Colored に関する一考察 -聖クロイース St. Croix 島を中心に(1733-1848)- 」『IDUN ー北欧研究ー』第23号(大阪大学言語文化研究科言語社会専攻デンマーク語・スウェーデン語研究室 発行)、2019年3月。また、フリーカラード居住区におけるある特定の住居の所有者及び居住者の変遷を中心に据えた論考も準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務校で平成30年4月より新しく役職に就任したため、予想以上に業務が増加し、当初思っていたように時間をやりくりすることが困難となった。また、2017年度夏に予定していた研究対象地域(現アメリカ領ヴァージン諸島)への調査出張が、同年カリブ海を襲った未曾有のハリケーン被害により約半年遅れた(2018年3月中旬実施)。その調査出張で得た史資料の整理・考察もその為予定より遅れている。その遅れが残念ながら現在、全体的な研究の進捗がやや滞っていることに繋がってしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の展開が少し遅れ気味であるが、これは研究最終年度の2019年度を総括の年と位置づけ、長期海外出張予定も入れず、これまで収集した資料の整理や考察を行なうなかで調節できると現時点では考えている。 また2019年度における研究では、前年度の研究を引き継いでこれまで空白部分であった奴隷解放後(1848-1917年)の自由黒人の状況を、現地新聞(St. Croix Avis他)や訪問者の手記、裁判記録、教会記録等を用いて考察する。特に解放直後に関して、元自由黒人と元黒人奴隷の一般的境遇の差がいかなるものであったのかを是非明らかにしたい。そしてその差が次第に拡大するのか縮小するのかも考究する。さらにAncestry.comの情報を用いて、個人レベルのケーススタディ(追跡調査)を実施する。 一方で、奴隷貿易を活発に行っていた英国側から見た当時のデンマークに関する記述を調査するために、英国議会議事録"British Parliamentary Papers, 'Slave Trade ' , Irish University Press, 1968.を所蔵する関西学院大学中央図書館への出張を行う。さらに、現アメリカ領ヴァージン諸島での遺伝系図学研究やDNA分析の成果を利用して、自由黒人が辿った歴史を再構築する。 2019年度は本研究最終年度であるため、夏期休暇以降はこれまでの研究を総合化し、研究成果報告書の作成に中心をおく。具体的には今年度末までに文献目録、関連年表、本研究の概要を所属機関の個人HP上に掲載する予定である。加えて今年度中に、所属機関の紀要にも研究成果の一部を公表したい。
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Causes of Carryover |
年度末近くに発注した図書が発注取り消しとなったため。 今年度は時期を早めて新たに図書を発注する。
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Research Products
(1 results)