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2016 Fiscal Year Research-status Report

中世フランス王国の政治文化ーカペー・ヴァロワ両王朝期の知識人とその作品ー

Research Project

Project/Area Number 16K03130
Research InstitutionToyo University

Principal Investigator

鈴木 道也  東洋大学, 文学部, 教授 (50292636)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords知識人 / 大学 / 俗語 / 百科全書 / 学権 / フランス / 中世史
Outline of Annual Research Achievements

今年度は主として二つの作業を行った。ひとつは、「百科全書の時代」である13世紀を代表する知的エリートであった学者ヴァンサン=ド=ボーヴェの創作活動を通じてカペー王朝期フランス王権と知的エリートの関わりを考えるものであり、もうひとつは、14世紀末から15世紀初めにかけての教会分裂期にパリ大学の総長として活躍したジャン=ジェルソンの生涯をふり返ることで、当該期の学権と王権(ヴァロワ王権)、教権との関係を明らかにしようとするものである。
前者として具体的には、ヴァンサンが編集した二点の政治的著作および彼の主編著である『大いなる鑑』の構造分析を行った。得られた結論は以下の通りである。すなわち、13世紀を代表する百科全書的作品である『大いなる鑑』をまとめあげたドミニコ会士ヴァンサン=ド=ボーヴェは、「内容は古いが新しい形でそれを示す」との意気込みをもって旺盛な編集・創作活動を展開していた。その活動は、ルイ9世をはじめとするカペー朝の王族たち、そしておそらくは托鉢修道会系の修道士を多く抱える廷臣集団とも緊密に結びついていた。彼の編集作業は、基本的にはキリスト教的世界観を上位に置きながら、そこに古典的な、あるいは世俗的な知的情報を統合・調和させていくものであったが、出来上がった彼の作品は、『大いなる鑑』においても、またそこから派生した政治的著作においても、彼あるいは王とその周辺の意図に沿って、ときに一定の方向性を与えられている。膨大な知を体系化し必要に応じて国政の場に提供するという点において、百科全書編者たる彼の果たした役割は大きかった。
後者は、現段階では予備的な作業にとどまっており、ジャン=ジェルソンが記した膨大な著作(書簡・説教・論文・建白書・講義録)を整理し、それをもとに彼の生涯を再構成したところである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

予定された二つの研究活動を遂行していくために必要な刊行史料・研究文献はほぼすべて入手することができた。研究対象とする人物が記した著作に関する基本情報(著作目録・写本残存状況)や彼らの詳細な年譜など、初期的な確認作業も終わっている。今年度主としてとりあげた二人の知識人のうち、ヴァンサン=ド=ボーヴェについては一点の論文を作成することができたが、他方で、膨大な著作を残しているジャン=ジェルソンについては、著作の整理に多少手間どり、論文の執筆には至らなかった。しかしこの点は事前にある程度予想されたことであり、全体として研究はおおむね順調に進展しているとまとめることができる。

Strategy for Future Research Activity

次年度は、ジャン=ジェルソンの著作のなかから、まず『神秘神学』と<Josephine >をとりあげ、彼の神学の基本的特徴を確認したい。その後彼が家族や恩師に送った書簡を分析することで、彼の神学が彼自身のどのような生活経験や価値意識に支えられているのか明らかにしていきたい。この作業を終えた後に、中世後期に西ヨーロッパ全域で大きな広がりをみせている「アレクサンドロス伝承」をとりあげてみたい。フランス王権の周辺にいる学者たちは、当該期の王権の在り方との関係において、このテーマをどのように取り扱っていたのか、そこに本研究課題が主たるテーマとする「近代国家生成期において世俗化していく知と権力の結託、あるいは対抗の諸相を明らかにしていく」ひとつの手がかりを得ることができるのではないかと思われる。

Causes of Carryover

当該科研費に基づく研究活動の成果として刊行予定の論集があり、その論集の執筆者が集まる研究会を3月末に開催した(3月28日~29日)。年度末の開催であったため今年度中に支出が間に合わず、次年度使用額が生じることとなった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度使用額は、前年度出張分の旅費として支出予定であり、当該年度使用額に関しては当初の予定通り使用する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017 2016

All Journal Article (2 results)

  • [Journal Article] 中世の百科全書とフランス王権2017

    • Author(s)
      鈴木道也
    • Journal Title

      東洋大学文学部紀要史学科篇

      Volume: 42 Pages: 192-160

  • [Journal Article] 特集《古典再読》マルク・ブロック著『封建社会』再読2016

    • Author(s)
      鈴木道也
    • Journal Title

      西洋史学

      Volume: 261 Pages: 73-77

URL: 

Published: 2018-01-16  

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